読者への挑戦つきで送る海上の殺人事件!
- ★★★ Excellent!!!
新聞部に所属する紀野屋島はヨット部の取材中に毒殺事件に巻き込まれてしまう! 海上で起きた事件ゆえに犯行が可能だったのは被害者と同時刻に海にいたヨット部の部員のみ。高校生活最後の大会を目前というタイミングでなぜ犯人は殺人を犯したのか? 刑事たちから第一容疑者と見なされた紀野は幼なじみである藤塚荘司の助けを借りて事件の解決に乗り出すが……。
海の上という事件の舞台こそ珍しいが、その推理の過程はとても論理的。事件の起きた時間や証拠に残された指紋、部員たちの証言など、一つ一つの手掛かりを丁寧に追い、網を絞るようにして犯人の条件に合う人間を探っていく。
そうして手がかりを全て開示してからの読者への挑戦状が出て来るのでつい嬉しくなってしまうのだが、本作はそれだけでは終わらない。最後の最後で一度解いたはずの謎が思わぬ形でひっくり返る。是非実際に推理しながら読んでいただきたい一作だ。
(「部活、どうでしょう?」4選/文=柿崎 憲)