つい先日まで寒めだった気がするのに、気がつくと暑くなってきました。おかげでコンディション悪いです!
という愚痴はさておき、今回は読み応えがありつつも読み切りやすい中編作品の4選をお送りいたします。
もちろんテーマはいつもどおりに「出逢い」ということで選ばせていただいておりますよー。だからこそ、バラエティに富んだ内容が取りそろいました珠玉の4作、ぜひとも快適な室温を保ちつつ、リラックスしてお読みいただけましたら幸いです。

ピックアップ

少年の目に浮き彫られる“鏑木美咲”という少女

  • ★★★ Excellent!!!

文芸部の新副部長になった須藤要は、新部長である鏑木美咲から彼氏役を務めるよう要請された。創作活動に専念したい彼女は要を虫除け代わりにしつつ、この関係性を今執筆している小説の参考にしたいらしいが……文芸を軸に巡る恋人ごっこの行方はいかに?

なにより注目していただきたいのは主人公の要君。彼は「仕上がってる」んですよ!
文芸部員だけど読み専寄りな彼は、書き手の美咲さんに校正者的で編集者的な客観性を求められていきます。その中で考えるんです。美咲さんっていう女の子のことをなによりも真剣に。そして悩んで迷ってとまどって、それでも彼女を理解しようとがんばるわけです。

ヒロインが立っている作品は数あれど、ここまで主人公を際立たせた作品はそうありません。しかもそれによって間接的に――それでいてこれほど鮮やかにヒロイン像を浮き彫れている作品は。

キャラの立てかたに一見ある方、まずはご一読ください!

(ちょうどいい中編4選/文=髙橋 剛)

すべては助手の手の内で! 見かけ倒し系名探偵、ここに誕生!

  • ★★★ Excellent!!!

歌ヶ江トキヲは堂々たる体躯と美貌を持つ、しかしコンプレックスまみれで鬱々とした青年。しかし、ある事件の容疑者として警察に目をつけられてしまう。それを救ったのは、中学生にしか見えない自称20歳の春日原六助だった。彼の濃やかな入れ知恵で“探偵”を演じた彼は、六助を“助手”とすることとなる。

本当にもう「見かけ倒し」なトキヲさんが超優秀な「童顔」の六助くんに操縦され、名探偵を演じる。個々のキャラ立ち自体もちゃんと見どころになっているんですけど、この関係性の作りかたが実にすばらしい!

ミステリーは謎解きが胆になるわけですが、トキヲさんの風貌はその言葉に説得力を与えていますし、実際のところを知る読者には普通の作品にはありえないおもしろみを味わわせてくれてます。

ネタとキャラが噛み合って醸し出された絶妙。ミステリー方面からもキャラ方面からも楽しめる一作です!

(ちょうどいい中編4選/文=髙橋 剛)

いい男といい女が錯綜する恋路、その果てに待つ大団円!

  • ★★★ Excellent!!!

貧乏旗本の六男坊、新之助。家督を継ぐ見込みなど万にひとつもありえない彼の元へ、三千石の寄合・佐橋家のひとり娘である菊乃との祝言話が持ち込まれた。あれこれと理由もあり、新之助はこれを断って、過去に縁のあった道場の再興を目ざすこととしたのだが……そこへ菊乃が現われ、門下生となりたいと願い出た。

夢みたいな逆玉を断って剣の道へと思いきや、菊乃さんのご登場。物語の最初からどんでんをばったばた返しまくるこの構成、目を惹かれずにいられません!
本筋もしっかり太く引かれているんですけど、飄々とした新之助さんの垣間見せる太い男気やらほろっと甘い情けやら、確立された主人公像が絡み合ってるのも感心のひと言です。

それに忘れちゃいけません。ヒロインである菊乃さんのキャラクター性ですよ。とんでもないじゃじゃ馬という前評判をその行動で覆していく彼女、好きにならずにいられませんから!

すかっとしててほろりとさせて大団円。時代もの好きじゃない方にも強く推させていただきますよー。

(ちょうどいい中編4選/文=髙橋 剛)

サウナが見せる人間! 人間が魅せるサウナ!

  • ★★★ Excellent!!!

嫌いだったはずのサウナの魅力に取り憑かれた著者さんによる「サウナ賛歌」がこちら!

サウナと著者さんのなれそめから始まり、そこでの体験談なんかが語られていきますが、描写が実に写実的です。いや、抽象的な例えもふんだんに盛り込まれてるんですけど、たとえば「サウナ→水風呂→ベンチ」っていうだけの流れを、ご自身の体感や状況を濃やかに描き出してみせるんですよ。文章からサウナが「視える」ことで読者は追体験できる――これってエッセイのひとつの完成形なんじゃないかと思うのです。書き手の方は参考になる部分、大きいかと。

そしてその濃やかさは、著者さんの人となりや、サウナで育てられた哲学をも見せてくれます。エッセイで読者を共感させるには著者さん自身の内側を見せる必要があるんですけど、それが自然に演出できているんですよ。正直やられました。すごいです。

サウナ話から見える極上の人間ドラマ、読んで損なしです。

(ちょうどいい中編4選/文=髙橋 剛)