いい男といい女が錯綜する恋路、その果てに待つ大団円!

貧乏旗本の六男坊、新之助。家督を継ぐ見込みなど万にひとつもありえない彼の元へ、三千石の寄合・佐橋家のひとり娘である菊乃との祝言話が持ち込まれた。あれこれと理由もあり、新之助はこれを断って、過去に縁のあった道場の再興を目ざすこととしたのだが……そこへ菊乃が現われ、門下生となりたいと願い出た。

夢みたいな逆玉を断って剣の道へと思いきや、菊乃さんのご登場。物語の最初からどんでんをばったばた返しまくるこの構成、目を惹かれずにいられません!
本筋もしっかり太く引かれているんですけど、飄々とした新之助さんの垣間見せる太い男気やらほろっと甘い情けやら、確立された主人公像が絡み合ってるのも感心のひと言です。

それに忘れちゃいけません。ヒロインである菊乃さんのキャラクター性ですよ。とんでもないじゃじゃ馬という前評判をその行動で覆していく彼女、好きにならずにいられませんから!

すかっとしててほろりとさせて大団円。時代もの好きじゃない方にも強く推させていただきますよー。

(ちょうどいい中編4選/文=髙橋 剛)