サウナが見せる人間! 人間が魅せるサウナ!

嫌いだったはずのサウナの魅力に取り憑かれた著者さんによる「サウナ賛歌」がこちら!

サウナと著者さんのなれそめから始まり、そこでの体験談なんかが語られていきますが、描写が実に写実的です。いや、抽象的な例えもふんだんに盛り込まれてるんですけど、たとえば「サウナ→水風呂→ベンチ」っていうだけの流れを、ご自身の体感や状況を濃やかに描き出してみせるんですよ。文章からサウナが「視える」ことで読者は追体験できる――これってエッセイのひとつの完成形なんじゃないかと思うのです。書き手の方は参考になる部分、大きいかと。

そしてその濃やかさは、著者さんの人となりや、サウナで育てられた哲学をも見せてくれます。エッセイで読者を共感させるには著者さん自身の内側を見せる必要があるんですけど、それが自然に演出できているんですよ。正直やられました。すごいです。

サウナ話から見える極上の人間ドラマ、読んで損なしです。

(ちょうどいい中編4選/文=髙橋 剛)