そのドワーフ、ファンタジーのただ中にて科学を語り、謎を明かす
- ★★★ Excellent!!!
新大陸にて発見された迷宮。魔物ひしめくその奥には莫大な財宝が眠っていて――一攫千金を目ざして集まり来た冒険者はその周辺域に生活の場を形作り、果てに生み出されたものこそ「迷宮都市(シティ・オブ・ダンジョン)」だ。そして、そんな都市で今日、科学主義のドワーフ、グレン・リベットと女魔法使いのストラス・アイラが、冒険譚ならぬ事件譚を綴る。
魔法とミステリーの相性が最悪なのは言わずもがな――どんなトリックも魔法で大概解決できてしまうので――です。実際アイラさんは魔法使いで、言わばミステリーの敵。ですがそこへリベットさんという科学主義者、つまり魔法の敵が投入されることで、起こるのですよ。思いがけない化学変化が! ファンタジーをミステリーたらしめている構造の妙も魅力ながら、このふたりの「敵対関係」、実にすばらしい。しかもその関係性こそが、リベットさんの推理の論理的痛快さを際立たせているのですからなおたまりません。
名作ミステリーのパロディ要素も楽しい、科学と魔法のミステリーです。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=高橋剛)