少年の目に浮き彫られる“鏑木美咲”という少女

文芸部の新副部長になった須藤要は、新部長である鏑木美咲から彼氏役を務めるよう要請された。創作活動に専念したい彼女は要を虫除け代わりにしつつ、この関係性を今執筆している小説の参考にしたいらしいが……文芸を軸に巡る恋人ごっこの行方はいかに?

なにより注目していただきたいのは主人公の要君。彼は「仕上がってる」んですよ!
文芸部員だけど読み専寄りな彼は、書き手の美咲さんに校正者的で編集者的な客観性を求められていきます。その中で考えるんです。美咲さんっていう女の子のことをなによりも真剣に。そして悩んで迷ってとまどって、それでも彼女を理解しようとがんばるわけです。

ヒロインが立っている作品は数あれど、ここまで主人公を際立たせた作品はそうありません。しかもそれによって間接的に――それでいてこれほど鮮やかにヒロイン像を浮き彫れている作品は。

キャラの立てかたに一見ある方、まずはご一読ください!

(ちょうどいい中編4選/文=髙橋 剛)