概要
「完璧な救済なんてどこにもない。僕らにできるのは、不完全なアリアを聴きながら、次の夜が来るのを待つことだけなんだ」
蒸気機関の煤煙と網膜投影広告のノイズが混ざり合う、碧き帝都 。 そこには、死者の脳から抽出された残留思念(ログ)を銀の円盤に写し、一時的に義体へと憑依させる「口寄せ師(デジタ・イタコ)」という職業が存在する 。
彼に許された時間は、わずか十五分 。
ある夜、口寄せ師・蓮見のもとを訪れたのは、名家・九条家の令嬢。彼女が持ち込んだのは、金庫の暗証番号を秘めたまま世を去った母のログだった 。しかし、呼び出された死者が吐露したのは、家系の鉄の枷(かせ)をすり抜ける、あまりに慎ましく、あまりに純粋な「銀の糸」の記憶で―― 。
十五分という不完全な供養プロトコル
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!未練がノイズとなる帝都で、物語だけが魂を救う
このエピローグは、物語全体を“静かに閉じる”のではなく、
世界そのものの呼吸音を最後に聞かせるタイプの終幕になっている。
大正という“裂け目の時代”を起点に、
サイバー大正という“引き延ばされた裂け目”へと繋げる語りは、
世界観の根幹を一気に俯瞰させる力がある。
特に印象的なのは、
未練や後悔がノイズとして街に溢れるという設定の詩的な残酷さ
「口寄せ」という行為を“物語に閉じ込める”と定義したメタ的な視点
ホログラムの鯨、蒸気飛行船、ネオンの海といった
レトロとサイバーが溶け合うビジュアルの鮮烈さ
そして最後の、
真鍮の歯車が噛み合う音。それが、不確かな世界で僕が信じられる確か…続きを読む - ★★★ Excellent!!!「今夜のコーヒーも、ゆっくり味わって飲むわけにはいかないらしい」
本作は、蒸気と電子が混在する「サイバー大正」の帝都を舞台に、死者の残留思念(ログ)を義体に憑依させる職能「口寄せ師(デジタ・イタコ)」の活躍を描いたSF短編です。
15分という接続時間の中で、生者と死者の断絶した縁を繋ぎ直す、美しくも儚い物語です。
この接続時間が限られているからこそ、本作においては言葉の一つひとつが重みを持っております。
また、五感を刺激する情景描写も非常に緻密です。
ページをめくるたび、読者は文字から温度や匂い、音までもが立ち上がってくる印象を受けるでしょう。
サイバーパンクとノスタルジックが絶妙に融合されており、フィルム・ノワールにも似たビターな物語が読者を掴…続きを読む - ★★★ Excellent!!!サイバー大正時代に生きる口寄せ師(デジタル・イタコ)のやり切れない短編
冤罪事件を犯してしまった刑事さんが、無実の罪を着せ、獄中死させた犯人に許しを乞うため、口寄せ師(イタコ)を頼ってくる短編です。
ネタバレになるので避けますが、やり切れない気持ちにはなります。
「記憶とは、自正気を保つための装置」とかナントカ。
1話目にあった言葉に、まずは納得しました。
記憶として意識して取り出せるのは一部で、今の自分の存在を保証するなにかなのかもねぇと共感しました。
大正時代の、近代化の間にある時代×サイバー×イタコの絶妙なテイストのバランスが、個性的でセンスがあるなと思いました。
おもしろかったです