煤煙と電子の海に沈む、あまりに美しい不完全な鎮魂曲(レクイエム)

蒸気機関の煤煙と碧いネオンが交錯する、サイバー大正という世界観。その描写力に、冒頭から強く引き込まれました。

死者のログを十五分だけ呼び戻す口寄せ師・蓮見。
彼が向き合うのは真相解明ではなく、死者が抱えたまま残した、救われきらない感情です。

第一話 銀の糸 の慎ましい純愛。
第二話 透明な罰 が残す、苦いコーヒーのような余韻。

完璧な救済は存在しないと語る彼の冷静さの奥に、不器用な優しさが静かに滲んでいます。

ハードボイルドの渋みとSF的ガジェット感、そして人間の業を描く深み。

読み終えたあと、夜の静けさが少し違って聞こえる、そんな印象的な短編でした。
静かな余韻の残る物語が好きな方、ビターで美しい読後感を求める方に、ぜひおすすめしたい一作です。

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