ようこそ生きてる人、死者の街へ。

SFと言うには少し気が引けるが、ファンタジーとも呼べない。
サイエンスと言うには死者に感傷的で、ファンタジーというにはあまりに無機な独特の雰囲気、アトモスフィアを発する作品。
とにかく用語がするすると頭に入ってくる、文章のテンポの邪魔をしない。
ルビが多くとも、耳慣れない言葉が多くとも、この死者の闊歩する世界をいともたやすく読者に理解させてビジュアル的にイメージさせやすいのは、一重に作者の中にイメージがきちんと成り立っているからだろう。
「SFは絵だ」と誰かが言っている通りならば、この作品はSFなのだろう。
こんな違和感丸出しでブレイドランナー以来(あるいは以前)からのコッテコテな漢字描写や胡乱な裏路地を配置して、死者を歩かせて絵で見せているのだから。
だけれども、どこかファンタジックなのはそういう世界をあっけらかんと書いている暗くなり過ぎない表現のせいかもしれない。
もっとこの世界観に長く浸かっていたい…、出来れば文章だけで。

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