自分にしかできない、自分にだからこそできることが、世界にはきっとある

鳥から進化したトゥトゥという種族が非常に魅力的で、序盤からのめり込んで読みました。
トゥトゥの暮らしぶりが緻密に、真摯に、そして真心たっぷりに描かれていて、彼らの文化や流儀を知っていくことがとても楽しかったです。翼や羽や嘴やかぎづめ、すべての描写にわくわくが止まりませんでした。とくにお気に入りなのは冠羽の動きや表情です!!

だけど何よりも素敵なのが、美しい羽毛に覆われたその内面なのです。トゥトゥでありながらも生まれつき飛ぶことができないエトゥリオルは、口には出せない苦しみを嘴の中に隠しつつ、いつも真面目でひたむきです。そのうえ人の気持ちに敏感で、思いやりの心で溢れています。
そんな彼が、地球人とともに空を飛ぶことを目指していくのですが。その過程の中で、心に響く熱いメッセージがふんだんに、押し付けがましくなくそっとぎゅっと詰まっています。生涯忘れたくない、心の財産になるような言葉にたくさん出逢えました。
クライマックスにかけての心震える感覚は、うまく言葉に変換できません。読書中に感極まって泣くことは多々ありますが、力が入りすぎて手の指が攣ったことは初めてでした。ちなみに薬指。それでも痛みより興奮や感動のほうが勝りました。圧勝です。

飛べない翼に挫けぬ心を持った彼の勇姿を、ぜひ多くの方に見届けて欲しいです。コンプレックスに悩む人や、自分じゃない誰かの人生に憧れてしょんぼりしがちな人にも、ぜひとも読んで欲しいのです。

私は人間に向いてないなぁと感じながら生きているタイプの人間なのですが、トゥトゥなのにトゥトゥらしく飛べなかったエトゥリオルの心の在り方に、深く励まされました。なんてカッコいい生き方なのでしょう、エトゥリオル。

シンプルな題名が、読了後は愛おしくてたまらなくなりました。
面白かった!素晴らしかった!大好きです!!

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