苦しいのは「飛べないから」だけじゃなかったんだと知った

遠い未来、遠い星で起こる、小さくて大きなある出来事。
生まれつき骨に障害があって飛ぶことのできない青年が、
テラ人の住まう移民街で、自分の生き方を見出していく。
アイデンティティとコンプレックスの間でモガきながら。

鳥から進化した種族「トゥトゥ」が暮らす惑星、ヴェド。
空を飛ぶ同胞たちと違って、地を歩くことしかできない
エトゥリオルは、駐在テラ人2世であるサムと仲よくなり、
やがて彼を中継点として、テラ系企業で働くこととなる。

トゥトゥの日常や習性が、生き生きと鮮やかに描かれて、
あっという間にこの物語に惹き付けられ、引き込まれた。
なぜ自分だけが飛べないのかと苦悩するエトゥリオルは、
テラ人がもたらした航空機の銀翼にどんな夢を見るのか。

同じ星のひと同士だからこそ交じり合えないこともある。
違う星に生まれたから、かえってよく見える現実もある。
エトゥリオルの選択と決意、彼を応援する人々の情熱に、
読み進む手が止まらず、クライマックスは胸が熱くなった。

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