遠い未来、遠い星で起こる、小さくて大きなある出来事。
生まれつき骨に障害があって飛ぶことのできない青年が、
テラ人の住まう移民街で、自分の生き方を見出していく。
アイデンティティとコンプレックスの間でモガきながら。
鳥から進化した種族「トゥトゥ」が暮らす惑星、ヴェド。
空を飛ぶ同胞たちと違って、地を歩くことしかできない
エトゥリオルは、駐在テラ人2世であるサムと仲よくなり、
やがて彼を中継点として、テラ系企業で働くこととなる。
トゥトゥの日常や習性が、生き生きと鮮やかに描かれて、
あっという間にこの物語に惹き付けられ、引き込まれた。
なぜ自分だけが飛べないのかと苦悩するエトゥリオルは、
テラ人がもたらした航空機の銀翼にどんな夢を見るのか。
同じ星のひと同士だからこそ交じり合えないこともある。
違う星に生まれたから、かえってよく見える現実もある。
エトゥリオルの選択と決意、彼を応援する人々の情熱に、
読み進む手が止まらず、クライマックスは胸が熱くなった。
鳥から進化したトゥトゥという種族が非常に魅力的で、序盤からのめり込んで読みました。
トゥトゥの暮らしぶりが緻密に、真摯に、そして真心たっぷりに描かれていて、彼らの文化や流儀を知っていくことがとても楽しかったです。翼や羽や嘴やかぎづめ、すべての描写にわくわくが止まりませんでした。とくにお気に入りなのは冠羽の動きや表情です!!
だけど何よりも素敵なのが、美しい羽毛に覆われたその内面なのです。トゥトゥでありながらも生まれつき飛ぶことができないエトゥリオルは、口には出せない苦しみを嘴の中に隠しつつ、いつも真面目でひたむきです。そのうえ人の気持ちに敏感で、思いやりの心で溢れています。
そんな彼が、地球人とともに空を飛ぶことを目指していくのですが。その過程の中で、心に響く熱いメッセージがふんだんに、押し付けがましくなくそっとぎゅっと詰まっています。生涯忘れたくない、心の財産になるような言葉にたくさん出逢えました。
クライマックスにかけての心震える感覚は、うまく言葉に変換できません。読書中に感極まって泣くことは多々ありますが、力が入りすぎて手の指が攣ったことは初めてでした。ちなみに薬指。それでも痛みより興奮や感動のほうが勝りました。圧勝です。
飛べない翼に挫けぬ心を持った彼の勇姿を、ぜひ多くの方に見届けて欲しいです。コンプレックスに悩む人や、自分じゃない誰かの人生に憧れてしょんぼりしがちな人にも、ぜひとも読んで欲しいのです。
私は人間に向いてないなぁと感じながら生きているタイプの人間なのですが、トゥトゥなのにトゥトゥらしく飛べなかったエトゥリオルの心の在り方に、深く励まされました。なんてカッコいい生き方なのでしょう、エトゥリオル。
シンプルな題名が、読了後は愛おしくてたまらなくなりました。
面白かった!素晴らしかった!大好きです!!
翼を持つ種族トゥトゥの少年エトゥリオルは、生まれつきの障害で空を飛ぶことができなかった。
彼は、遥か遠い地球からやってきたテラ人の飛行機を目にし、いつかあれに乗って空を飛びたいと夢見るようになる。
舞台となるマルゴ・トアフの風景、そこに暮らすトゥトゥの生態や文化、他の星から来たテラ人との交流や齟齬——そういった背景が一切の手抜かりなく緻密に描き込まれ、見たこともない架空の世界が鮮明に脳裏に浮かび上がりました。
トゥトゥとして健常であるか否かということや、トゥトゥでありながらテラ人の文化で生きるということ。主人公のエトゥリオルが抱える問題の本質は、現代社会の中にも存在するものであり、とてもリアルに感じました。
エトゥリオルの上司であるジンをはじめ、彼を取り巻く登場人物たちの心情も丁寧に描かれており、誰も彼もが非常に魅力的です。(個人的なお気に入りは、ちょっとひねくれ者のエイッティオ=ルル=ウィンニイです)
エトゥリオルがテスト機のパイロットとなり、初めて空を飛ぶシーンでは思わず涙が溢れ、その後のラストまでちょっと訳わからないくらい泣き続けながら読みました。
本当に素晴らしい物語でした。もうすごい。本当に素敵。感動しすぎて語彙力が低下し、この作品の魅力をうまくお伝えできないことをお許しください。
鳥から進化した種族トゥトゥの暮らす惑星。生まれつき障碍のために飛ぶことの出来ないエトゥリオルにとって、マルゴ・トアフは暮らしやすい街とは言えなかった。地球からやってきた少年サムと友人になったエトゥリオルは、地球人の乗り物・飛行機を目にする。トゥトゥよりはるか高く、速く飛べる翼に、エトゥリオルは憧れる――。
コンプレックスを抱えたエトゥリオルの心情、地球人のサムやジンの心情が、繊細に、丁寧に描かれています。いろいろと辛いこともありますが、エトゥリオルとジンの周囲の人々がみな優しく、前向きなところに励まされます。
是非、最後の感動を味わってください。