透明な水に滴り落ちた一滴の赤インクが……

こちらもまた読み応えのある傑作でした。
シリーズものとしての一作ではありますが、もちろん単独で十分面白い作品です。

前半の主人公の風岡君は優しく心遣いのできる高校生一年生。
とっつきづらいけど不思議な魅力のある影浦君という友達と仲良くなり、透明感あふれるさわやかな高校生活が始まります。

その透明な水に滴り落ちた一滴の赤インク、それが本作のヒロインである千里です。
眉目秀麗、頭の回転もよくて、積極的で、赤い髪の魅力的な女子高生。

この千里と風岡の交流というか恋愛が始まってから、物語は徐々に転がりだしていきます。

甘くてさわやかな高校生ならではの恋愛物語がスタートしますが、ここから一気に千里の様子が一変していきます。
そして透明だった高校生活は一気に真っ赤に染まっていくのです(殺人とか血の赤ではないですよ)。
この辺りのストーリー展開がとにかくすごい!
この作者ならではの緊迫感と、姿の見えない恐怖感で物語にぐいぐいと引きずり込んでいきます。

やがて明らかになる千里の目的。
そして彼女と対峙することになるもう一人の主人公の優梨という女子高生が登場し、物語はますますヒートアップしていきます。

幾重にも絡んだキャラクターのつながり、千里の抱えていた傷ともいえる過去。
それらに巻き込まれながらも敢然と立ち向かう風岡と影浦の名コンビ。

運命でつながったような主人公たちがそれぞれに活躍し『千里』というもう一つの運命に対峙してゆく。
そして明らかになる千里の意外な真相とは!

ミステリーを得意とする作者の魅力が存分に発揮され、また今回の作品ではキャラクターの魅力が物語を幾重にも彩ります。
重厚ながらさわやかで、恐ろしくも美しい、そんな複雑な魅力にあふれた作品でした。

おすすめはシリーズ丸ごと読んでもらうことですが、とにかくこちらも面白かった!

最後の最後まで目が離せない作品です。
ぜひ手に取ってみてください!

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