第3話 明日への希望



「啓ちゃん、なぜわたしがこんな絵を書いたかわかる?」


「庭の薔薇の木に想いをこめて書いたんだろ?」


「ううん~あなたに想いをこめたの、想いという字をよく見て!」

啓介は手のひらに想という字を書く。

「木、目、心‥」

「言葉には何かの意味があるの、わたしは自分の想いを全力込めて、あの絵を描いたのよ」


「和美、きみはやっぱりもうこの世にいない。きみのあの不思議な能力、きみは命をこの絵に転写していたんだ‥」

啓介は言葉に詰まってしまった、


和美は大粒の涙を流しながら

「ちがう‥啓ちゃん、思い出して、あの日の朝のこと」


‥啓介の眼前にあの日のクリスマスイブの光景が走馬灯のように駆け巡った、


‥ああそうなのか‥おれは和美とケンカしておれはうちを出るや道路に飛び出した。


車のきしむ急ブレーキ、衝撃音、暗闇‥救急車の警笛

啓介はいまはっきりと事態を確認できた、


‥‥そうだったんだ‥‥


「啓ちゃん、ごめんなさい、わたしが悪いの」

和美は啓介に寄りかかり泣き崩れる


「和美、顔を上げて、きみは悪くない」

「わたしがあんなこといわなければ」

和美は啓介を抱きしめ、泣き噦る。

「もういいんだ、おれは怒っちゃない」

「‥‥‥」

「ありがとう!おれはきみのおかげで一年余分に暮らせたんだ。」

「けいちゃん‥‥」


「さよなら、和美」


「けいちゃん、行かないで


「啓ちゃん」


「和美には和美の人生がある、だから

おれが縛ってちゃいけない、」


「うん」


「でもおれよりいい男みつけろな!へんな奴に引っかかるんじゃないぞ」


「わかった、」


「じゃあちょっとでかけてくる」


「行ってらっしゃい」


和美は涙で声がでない。


扉を開けると雪が白い花びらのように舞っていた。


啓介が少しずつ消えていくのが和美にはみえた。


和美はドアを閉めた。涙が止まらない。

雪が少しついた手でテーブルにおいてあったスケッチブックをもう一度ながめる


薔薇の木に書いてあった目は消えている。そし

そこにはメッセージが書かれている。


メリークリスマス

和美


和美はそこに書き添える

メリークリスマス

啓介


その瞬間真っ白な薔薇が見事咲き誇っているのがはっきりとみえた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

クリスマス ラブ 夢野光輝 @kantoku007

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ