心理の情景化 抉り出される普遍性

筆者である、藤九郎さんの意図とは違うのかもしれませんが、私に伝わってきた事をレビューとさせていただきます。
この文章たちが私の心を掴んでしまうのは、自分の奥底にある何かを呼び覚ましてしまうからなのでしょう。
誰もが持っている、認められない部分、自分の嫌いなところ、もしかしたら、心の奥底に閉じ込めてしまって、そのまま忘れた気になっている事があるかもしれません。
藤九郎さんはせっかく私が隠しているものを、わざわざもっとも見えやすい私の肌に持ってきてしまって、目をふさごうにもふさげない、触らないで置こうにも、普段は気にも止めない髪の毛さえそれを突き刺してしまうのです。
おどろおどろしい描写が、あたかも催眠導入の様に、私を心の奥底まで連れて行き、見たくないものを付きつけます。
最後まで、おどろおどろしさを残しつつも、爽やかさを感じさせてくれるのは、私の心にこのように囁かれたからでした。
「誰もが認められない自分を持っているさ、でもね、いつか何とか折り合いを付けて、そいつとも仲良く出来るのさ」
誰もが抱えている普遍的なものを、すばらしい心理の情景化にのせて私に届かせてくれた――そう感じました。勉強になります。ありがとうございました。

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