魅力的な人物描写に、人を愛する楽しさを思い出す

「なぜ、こんなにも私の心を掴むのだろう」

 そう考えながら、いつも、私はこの作品を読み進めていた。
 一旦読み始めると、どんどん先が読みたくて止まらなくなる。
(何故なんだ、何故、読みたいんだろう)

 この作品には、オークショニアという、聞きなれない職業が登場する。仕事の内容は、やはり、知らないことが多く、新鮮だ。

 しかし、そこで働く人達は、私達と何ら変わらない、悩んだり、努力して継続したりという日々を送っている。

 そんな、彼らが愛しくてたまらない。主人公が過去へ戻って彼らを愛するように、私は、私自身の過去を振り返って、かつて愛することができなかった人達を『愛しなおす』追体験をしているのではないだろうか、という思いに突き当たった。

 人を愛することは難しいと、勘違いしていたのかもしれない。

 むしろ、

 人を愛することは楽しいことなんだ。

と、改めて教えてもらったのかも知れません。

 もちろん、そう感情移入できたのは、岩澤豆樹さんの、描写力、洞察力によるものです。

 魅力的な人物描写にチャレンジしたい、そう思わせる作品でもありました。

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