〈[胎動篇・生誕篇]世界ノート〉

 ※ 作品の発想から執筆していく段階にかけて、著者のイメージやメモ書きとして残されていたもののうち、実際に作品に生かされたり前提となった構想を、できるだけわかりやすい形に整理し、まとめてみた。



◎ 世界設定


 地球の表面を紫色の毒のガスが覆いつくしてから千数百年後。


 毒ガス発生の原因は不明――化学兵器の使用・事故等による拡散、環境破壊、産業廃棄物の化学変化等々が考えられる。


 人類の多くは死滅し、高地へ避難した者のうち、環境の激変が引き起こした『第二の創世記』と呼ばれる長期間の大嵐をかろうじて生き延びた一部の者だけが取り残される形で〝大陸〟における社会が細々と営まれてきた。


 毒ガス発生以前、人類の多くは平地の都市部に集中していたため、高地には高度文明の痕跡はほとんどなく、あってもすでに荒廃してしまっている。


 人類以外の生物は、高度文明の下では絶滅に瀕していたものも多かったが、むしろ人類より本能的に危機を察知していち早く高地へ避難し、適応してきたため、意外なほどに多様である。


 〝大陸〟が旧世界のどこに位置するのかは不明であるが、それを議論する者はほとんど存在せず、問題にされることもない。彼らが共通して話す言語がもともと〝何語〟であったかがすでに問題にならないのと同様に、人種的な差異も、徹底的に交配が進んだことにより、個人に現れる多様な特徴として残るのみである。


 人種的な特徴は、スピリチュアルにおいてのみ偏りが顕著である。そもそもブランカにおける生命回廊という生命誕生システムがいかなる理念のもとで、どのようなことを目的として作られたかによるが、それはすでに長い歴史を持ってしまったスピリチュアル社会において忘れ去られるか、伝説のように変質して問題とされなくなっている。


 ただ、スピリチュアルが現在も理想としている、頑健で優れた男子の体型とか、豊かで均整のとれた女子の体型、優美で知的な容貌といった特徴は、過去の高度文明社会で支配的な役割を演じていた人種が持っていた、主要な特徴の名残りであろうことは容易に推測できる。それは、保存された精子・卵子が、一定の基準をもって収集、選択されたものであるとあきらかに考えられるからである。

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純真なマチウ1[胎動篇]+2[生誕篇] 松枝蔵人 @kurohdomatsugae

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