純真なマチウ1[胎動篇]+2[生誕篇]

作者 松枝蔵人

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102人が評価しました

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★★★ Excellent!!!

猛毒のガスによって人が住める土地が限られている世界。
過去に滅んだ高度文明の遺産を駆使するスピリチュアルと、大多数を占める普通の人間フィジカル。
すべてのスピリチュアルが生まれる場所、螺旋都市ブランカ。そこから離脱することを決めた皇帝の娘カナリエル。密かな脱走劇をサポートする護衛に選ばれたのは、奴隷としてブランカにいたフィジカルの男だった。

純真なマチウ。
これはマチウが生まれるまでの物語。
マチウの母となるカナリエルを中心に、様々な思惑が交錯する。

最初にこの作品を目にしたときは、冒頭が読みづらかった。
それが改訂によって格段に読みやすくなり、最後まで飽きることなく読み切った。

とっても面白いです。

★★★ Excellent!!!

過ぎ去った時代にどこか似ている遠い架空の未来で、
架空の大陸を舞台とする壮大な歴史叙事詩が幕を上げる。

塔のような蟻の巣のような独特な構造を持つ都市、ブランカ。
そこに住まう「スピリチュアル」の中でも、
少女カナリエルは特に美しく聡明だと評判で、
まっすぐな心根は誰からでも愛されている。

彼女は婚姻を控えていた。
婚約者もまた、誰もが認める優秀な青年、ロッシュ。
下層出身で、標準よりも華奢な体格のロッシュだが、
理想の高さは一種の野心にさえ見えるほどだ。

カナリエルとて、ロッシュのことは嫌いではない。
でも――。

そしてスタートする、カナリエルの逃避行。
急展開に次ぐ急展開を重ねながら、
何かがひずんでどこかが危うい世界観が語られてゆく。
大陸の歴史は今、大いなる転換点に差し掛かっている。

ホモ・サピエンスに該当する「フィジカル」と、
優性種として彼らを支配する「スピリチュアル」。
両者の対比、種としての差異、対立感情、戦史と、
両者が触れ合って助け合うカナリエルの旅路。

カナリエルの両親は、
スピリチュアルの帝国像を象徴する。
神秘的で且つ機能的な「生命回廊」と、
それを預かる、聡明なる母ミランディア。
戦場におけるカリスマ性から皇帝に選任された、
娘を溺愛する父オルダイン。

軍人、シスター、文官たちが
それぞれの信ずるもののために奔走し、暗躍する。
これから起こるのは改革か、陰謀か。
訪れるのは帝国下の平和か、分裂と混乱の時代か。

鳥籠から飛び出したカナリエルの逃走劇に、
共に命を懸けてくれる仲間がいる。
腕の立つ傭兵のゴドフロアと、器用な商人のステファン。
ちぐはぐな3人を結び付けるのは、
ミランディアに託された「カプセルの中の子ども」だった。

カナリエルと子どもに特別な感情をいだく男たちが、
それぞれに魅力を持っていてカッコいい。

プライドの高… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

デビュー作、聖エルザクルセイダースですっかりファンになってしまった約30年前。
瑠璃丸伝以来お名前を見かけなかったのですが、たまたま目にしたこちらで懐かしいお名前を発見。

横書きに慣れていなかったので、最初読みづらかったのですが、話が進むにつれ、次へ次へと文字を追う楽しさが。
ファンタジーを読むのは久しぶりだったのですが、あっと言う間に引き込まれて行く感覚はあの頃と全く変わっていません。
流石松枝先生!

松枝先生、また楽しませて頂きありがとうございます。
感無量です。
続編楽しみにしております。

★★★ Excellent!!!

最初は、横書きで読み易くする事が出来てない、ベテランの作品だなとしか思っていませんでした。
しかし読み続けると、だんだんその言葉が紡ぐ世界観に惹かれていく自分がいました。序章、1章と読み続けると止まらなくなります。
久々に異世界転生以外のファンタジーにハマりました。
続編を期待してます!

★★★ Excellent!!!

言葉を次から次へと追っていくことがこんなにも快感だったとは。わたしはこの感覚を随分と忘れていたように思う。それを、壮大な世界観と瑞々しい言葉で描きだしたこの作品がいとも簡単に思い出させてくれた。夢中でページをめくっていたあの頃がある人々にぜひ読んでもらいたい、おもしろいです。

★★★ Excellent!!!

 松枝蔵人氏はライトノベル文学の夜明けを飾った明星であった。
 今では当時のことを知る術は無いが、その輝きが不滅であることは本作を読めば明白である。
 まるで映画のような情景描写、息遣いすら伝わるような生き生きとした登場人物達、そして圧倒的な世界とそこに根付く人々の社会構造が重なり合い、重厚な作品を構成している。かといって難解にはならず、気持ち良く読み進めることができるだろう。
 この小説を通じて、月日を重ねても、微かに、でも確かに残る少年だった頃の純粋さが私を鼓舞するかのような高揚感を覚えた。煙を吸い込んでも、鉄の塊に跨ってスロットルを回しても、長い髪を夜通し撫で続けても、我々が少年だったという事実は揺らがない。そんな忘れかけていた純粋さを取り戻させてくれる。
 今を輝く若者にも、文筆を生業にしたいと考える者達にもこの小説が届くことを願っている。流行に乗り目先の利益を追求する、独創性のない退屈な大人達に中指を突きつけるミドルティーンにとって、これ以上の教科書はないだろう。
 松枝蔵人氏も永遠に少年なのだ。