地球獣ボコイ

作者 松枝蔵人

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★★★ Excellent!!!

ボコイ。ポケモンのピカチュウみたいな存在です。ピカチュウよりも脇役。読了すると「やはり主役か」と思いますけど。
主人公は子供ですが、物語構成上の主役は坂本龍馬。彼に振り回される子供の視点で物語は進みます。主人公が留守番する局面もあるわけで、そんな時はその後の大展開のネタ込めが裏でなされます。でも、読者は主人公の子供目線ですから、伏線を事前に察知できず、アッと驚く仕掛けです。
その物語とは、明治維新間も無い頃を舞台とした歴史IF物。多分に冒険活劇的な風合いを帯びてます。
作者のプロフィールを拝見するに、塾講師をしているそうです。担当科目は歴史じゃないでしょうか。
ラノベ的な砕けた文体ですが、歴史的背景の分析が奥深く為された上で物語を転がしているので、大人の読書に耐える水準に仕上がっています。150年前に、仮に坂本龍馬が生きていたとして、彼が本作品の様な行動を採っていたら、確かに大日本帝国は違った道を歩んでいたかも…と納得させる展開です。
コンテストに応募するなら、文字数を十数万字に制限しないといけませんが、この物語には30万字が絶対に必要です。とは言え、読み易いので、文字数に二の足を踏むのは勿体無い。
あなたも本作品が実力で数多の星を獲得した事に首肯するでしょう。高い確率で。
1つだけ解せぬ点は、孫文の存在。作者は続編を書く積りなのかもしれません。楽しみです。

★★★ Excellent!!!

第3章『地球獣+ボコイ』まで読みました。

現状の舞台の中心は明治時代の日本。
異国の地に渡り、更にそこから日本に帰って来たリョーマ。

そしてその近しい子『おいら』と、リスのような大きさの地球獣ボコイ。

史実を元に、発想を練って遊んで、遊んで練った、そんな大胆不敵な話の構成です。
読んで面白く、愉しく、胸が踊ります!

ボコイは人の言葉を発音はしません。
しかし、
人間の営み、幕末を熱く生きた剣士や革命の士の生きる姿さえ悠然と見届け、
時に(恐らくボコイにとってささやかに)介入し、彼らの意思をより純粋な形に昇華させて、未来に挑ませているかのような、
そんな超然的な精神を、ボコイは持っています。(持っていると、私は感じました)

話のスケールが大きいんだよなぁ。
ワクワクするでしょう、そりゃあさ!

リョーマのように未知の事柄に対して素直に見る視野を持たせてくれながら、同時に『おいら』のように歴史の偉人とボコイを隣人として、人間と世界を知る事も出来る。

楽しみの幅のスケールも広く大きく取っていてくれている、そんな雄大な作品です。

★★★ Excellent!!!

盟治も10年過ぎようとするころ。
文明開化、富国強兵が声高に叫ばれる極東の国、日ノ本。

新しいものと古いものは混沌として日ノ本に存在し、
或いは同調して溶け合い、或いは反駁して争乱を招き寄せる。
変わる時代の内包するエネルギーは膨大で、
今にも爆発せんとするその勢いは、危険で熱い。

そんな日ノ本に暮らす恩師から手紙を受け取ったリョウマは、
「おいら」を連れて、放浪を続けたユーロピアを後にした。
捕鯨船で海を越えて、北窮近くに浮かぶ火山の無人島へ。
そこで見付けたリスに似た生き物は、なんと火を吹く珍獣だった。

パラレルワールド、と呼んでよい世界観。
史実の日本では幕末の混乱の中に散ったはずの人々が、
日ノ本では、情熱と情念を胸に隠れ住んでいる。

歴史に「もしも」はないけれど、
これは「もしも」の上に成り立った伝奇物語。
胸が躍らないわけがない。

史実に生きた人々も、「もしも」の世界で生き延びた人々も、
地に足の着いた葛藤と苦悩、決意を抱えて、
一触即発の世の中を彼ららしく戦い抜こうとしている。

「明治10年までは幕末だ」と聞いたことがある。
熱風に血と硝煙の匂いが立ち込める、革命の時代だ。

そこで繰り広げられる人間ドラマはヒリヒリとして、
切実で痛々しくて残酷で美しくて、
どうしようもなく一心不乱な真実を
容赦なく突き付けてくるから、私はすごく好き。

★★★ Excellent!!!

『リョーマが生きていた』くらいのことなら、思いついて執筆できる書き手はいるだろうが、そのリョーマが10年に渡って洋行し、そのかたわらには小さな子が――となると、なかなか発想できるものではないだろう。

それを軽々とやってみせ、しかも「ボコイ」というさらなる奇想も合わせてくるのが、サービス精神・チャレンジ精神旺盛なこの作者らしいところではなかろうか(かつての作品群を覚えている人はどのくらいだろう?)。
他にもいろいろある「仕掛け」を紐解くのも楽しい。維新史をある程度知らないと分からないところはあるかもしれないが、基礎教養レベルがあれば問題はないだろう。

書き手の目で見ても、「大河ドラマ」とはこう作るのかと考えることができる(その意味では平行して掲載されている『マチウ』も良いお手本)。

第一部完結ということで、さらなる展開を心待ちにしたい一作。