一触即発の日ノ本を、「おいら」とリョウマが駆け抜ける!

盟治も10年過ぎようとするころ。
文明開化、富国強兵が声高に叫ばれる極東の国、日ノ本。

新しいものと古いものは混沌として日ノ本に存在し、
或いは同調して溶け合い、或いは反駁して争乱を招き寄せる。
変わる時代の内包するエネルギーは膨大で、
今にも爆発せんとするその勢いは、危険で熱い。

そんな日ノ本に暮らす恩師から手紙を受け取ったリョウマは、
「おいら」を連れて、放浪を続けたユーロピアを後にした。
捕鯨船で海を越えて、北窮近くに浮かぶ火山の無人島へ。
そこで見付けたリスに似た生き物は、なんと火を吹く珍獣だった。

パラレルワールド、と呼んでよい世界観。
史実の日本では幕末の混乱の中に散ったはずの人々が、
日ノ本では、情熱と情念を胸に隠れ住んでいる。

歴史に「もしも」はないけれど、
これは「もしも」の上に成り立った伝奇物語。
胸が躍らないわけがない。

史実に生きた人々も、「もしも」の世界で生き延びた人々も、
地に足の着いた葛藤と苦悩、決意を抱えて、
一触即発の世の中を彼ららしく戦い抜こうとしている。

「明治10年までは幕末だ」と聞いたことがある。
熱風に血と硝煙の匂いが立ち込める、革命の時代だ。

そこで繰り広げられる人間ドラマはヒリヒリとして、
切実で痛々しくて残酷で美しくて、
どうしようもなく一心不乱な真実を
容赦なく突き付けてくるから、私はすごく好き。