耳を塞げ、お祈りの時間はもう来ない

序盤の数話を読んだ貴方はまず、このタイトルみたいな印象を受けるだろう。
闇夜を駆け抜け、神出鬼没。年齢も正体も分からず正義の味方でもない。邪神の元、己が信念の元、神話生物をぶちのめす。
多くの謎を持ちつつウィットに富んだジョークも言う彼は、ダークヒーローの中でも格別魅力的だ。

洋画の様にクールで爽快。
人に熱く震える決意をもたらして。
セピアがかった写真の様に時代が映り込み。
人々の感情が渦巻き、時に為す術も無く悲しみに飲み込まれていく。


この物語ではこうやって、多くの人間が彼を語る。
その一言一言の片鱗が、我々にウィップアーウィルを伝えてくる。
それは地球の、歴史の片鱗であり彼の生きてきた片鱗だ。

こんなの、心揺さぶられる物語だって決まってるじゃないか。


読み進めれば進む程、その片鱗は貴方の中に夜鷹をつくる。
夜鷹の現れるさまが、彼の姿がその技が、脳裏に浮かぶ。

そうなった貴方の心臓は、既に鋭い鉤爪に囚われているだろう。
最後の一文字まで読んだ貴方の元に、彼はきっと現れる。
その時聞いてくれ。

なぁ、夜鷹の鳴き声は聞こえるか?

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