濃縮された人の生き様を、中華料理と共に味わおう

 下町の中華料理屋、看板娘と謎の多い料理人が今日もお客様を出迎えます。

 料理の描写も本格的で匂い立つような飯テロ小説の一面を持ちつつも、その1話1話は綺麗にまとまっている。それは作者様が心血注いで描く鮮やかな料理さえ、物語の付属品にしてしまう。
 では見所は何か。
 オカルトなアクション? 
 二人の関係性? 
 それもあるだろう。いや、私が一番推したいのはやはり人間ドラマか。長く冗長に書くことなく、短い中に綺麗にこめられた人の生き様は物語を料理以上に味わい深く魅せてくれる。何気ない仕草、発言がただのモブですらその過去さえ見えるようにぐっと濃い。
 物語の切り口と文章は軽妙で読みやすい。だが飯テロやアクション、料理店の事件をポンポンと読み進めながら名脇役たちの息遣いを確かに感じることができるだろう。

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