痛みを抱えてそれでも進む

さざ波の押し寄せる音が聞こえる物語、というより温暖な海の中を漂っている感覚にさせてくれる作品でした。
時に穏やかで、しかし苦しさや悲しみを内包し、それでも周囲の環境や人々と交流し『生きていく』人間のドラマだと思いました。
初めて書き上げた小説、と紹介されてありますが、とてもそうは思えないほど確立された文章でした。大人の鑑賞に堪え得る、とでも言いましょうか。
温度、音、匂い、景色など、文字だけでは認識することのできないはずの要素を、充分に表現している良作だったと思います。
普遍的で、しかし『ここにしかない』物語を楽しめました。

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