回想・フレデリック05
それから一週間後、僕はトードリリーに計画を伝えた。
自分には婚約者がいる事、君が望むのであれば、僕には君を救う覚悟があるのだということ。
だけどもトードリリーは呆然としたきり悲しそうに微笑むだけで、その反応は予想外に冷めていた。てっきり喜んでくれるとばかり思っていた僕は、或いは突拍子も無い提案に混乱しているだけなのだろうと推し量る事にした。
「返事はすぐにとは言わないから。また来週。いやいつでも良い。レイリの気持ちが落ち着いたら」僕はそう付け加えた。急かすつもりはなかった。何よりこの基地から彼女が居なくなってしまったら、今度は寂しくなるのは僕の方だったのだから。
小さく頷いた彼女は、次にはいつものトードリリーに戻っていた。告白したのは僕で、返事を待つのも僕のほう。どうにも不思議で内心笑えたのは秘密だ。勉学と鍛錬に打ち込んだ青春にそんな暇は無かったし、恋人との馴れ初めにしても、そう言えば愛を告げてきたのは向こうだった。
もしかしたらこれが恋なのかも知れない。そう思った淡い想いを、僕は喉元で押し戻して殺す。馬鹿な事を。僕には恋人がいる。そして何よりこれから子供にしようという少女への恋慕など、冗談でも許されて良い訳が無い。そうだ。僕は純粋に彼女を救いたいのだ。
橙色に染まる基地の、その赤を纏ったトードリリーを見て僕は思う。どうか彼女が救われますように。そして願わくば、僕の側にずっといてくれます様に、と。
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