トードリリーの歌 - A song less love song -

糾縄カフク

プロローグ01


             鳴かない鳥は歌いました。

          心の中で、きっと貴方を愛していると。

          

             鳴かない鳥は願いました。

          心の中で、ならば私を救って下さいと。

          

             鳴かない鳥は叫びました。

          届かない声で、本当は死にたくないと。




 砂塵に混じった鮮やかな火の粉が、銃と人の成れの果てを残す灰燼の荒野に、黒煙を纏って舞う。


「こちらルフゼロ《メジヌン》制圧を完了」


 ノイズの粒子にざらついた声が響き、一陣の風が立ち込めた砂煙を払うと、たった今最後の敵に死を与えたであろう、人型の機動兵器が佇んだ姿を現す。




 ここは砂漠の国のどこか。

 声のあるじは遠い大陸からやって来た、恐怖を根絶やす為の兵士。

 声のあるじが乗っているのは、正義を振りかざす為の殺戮の兵器。


「ルフゼロ《メジヌン》、これより帰投する。――自由は常に銃と共に」

 やがて国是を末筆に添えると、黒鉄くろがねの騎士は踵を返し煙に消えた。

 後にはひしゃげた戦車の砲塔が、赤く染まってギイギイと揺れている。


 それは何かを叫び続けた余り、喉から血を吐いて自らを汚す、或いは杜鵑草トードリリーの様だった

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