日記・トードリリー03

 トードリリー。新しい名前を貰った。

 蛙じゃない、鳥の名前。可愛らしい、鳥の名前。


 いや、あれ?彼は何と言っていたっけ。

 もしかすると、花の名前だった様な気もする。


 だけど残念。彼の国の言葉をボクは完全に知ってはいないから、何となくで推し量る事しか出来ない。


 ただ「歌えない鳥」その単語だけはボクにも分かった。

 鳴いて鳴いて鳴き叫んで、自分の胸を血で濡らし、それでもなお鳴く事を止めない。何だか悲しい鳥の名前。ん?花だっけ?鳥?まぁ、この際なんだっていっか。

 

 だってこれは、ここに来て初めて感じる対等な人としての扱いでもあるんだから。嬉しいな。いっぱしの女の子に戻った様な気もする。少し恥ずかしい。でも嬉しい。


 だからボクは、同じ鳥の名で彼をルフと呼ぶ事にした。

 昔読んだ物語の、強くて雄々しいロック鳥。笑顔で頷く彼は、どうやらその物語も読んだ事がある様だった。


 ――レイリ。ボクの名の由来の砂漠の詩まで知っている。

 彼は一体何者なのかな。ボクの国の言葉を話せる人だって少ないのに、本当に、本当に軍人なんだろうか。


 それとももしかして、或いはどこからか舞い降りた、天国の鳥かも知れない。


 だってボクと違ってとても美しいもの。

 ボクの様に傷だらけじゃあないし、綺麗な声で淀みなく喋るし、とにかく何もかもが全然違う。


 レイリとメジヌンは、さる部族長の息子が、少女レイリへの恋に狂う所から始まる。


 ああもう。もしボクがメジヌンだったら、きっと彼への想いに狂ってしまうかも知れない。


 ――何を言っているんだ、ボクは。


 訓練は憂鬱だ。

 だけれど彼と会う事は楽しいんだ。

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