日記・トードリリー06
遂に頷いてしまった。
爆弾としての訓練を受けて二年。標的は勿論ルフ。
ルフには婚約者が居た。
何を勘違いしていたんだろうと自分が恥ずかしくなる。
ルフと同じ金髪の、とてもとても綺麗な女性。
二人はきっとお似合いだ。ボクが彼の側にいるより遥かにずっと。
その瞬間に覚悟が出来て、夢から醒めた。
ああ、やっぱりボクは居なくていいんだって。
ボクが死ねば、報奨で遠縁の親族が恩恵に預かるのだと言う。
だったらそれで良いじゃないか。そう思い込むしか無いじゃないか……
この気持ちが何なのかが分からない。
ただ、恋人と一緒に過ごす彼の側で、この醜い身体で生きていくのはとても辛いと思った。
首筋から下半身に至るまで付いた火傷の跡。あの日自宅に踏み込んだルフの国の軍隊が、ボクの家族を皆殺しにした時、焼け落ちる家の中で負った傷。
クローゼットの奥に押し込まれて、目の前で姉さんが死ぬ瞬間を最後に、ボクの記憶は途切れていた。
ああ。運命ってやつはどうしてこうも残酷なのか。
ただ憎ませてさえくれれば、或いは何の迷いも無く命を絶つ事も出来たろうに。あまつさえ、その相手に、こんな想いを抱いてしまうなんて。
鏡を見れば分かるだろう。
身の程を弁えねばならなかった。
醜い自分には、醜い自分なりの惨めな最後を。
相応しい、相応しいさそれがきっと。
決行は三日後。
天国に抱えて行く思い出だけを寄せ集めよう。あそこでボクは、ボクだけのルフを探すんだ。
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