詰め込まれた全てがハイクオリティ! この物語はエンタメ業界を覆すぞ!

この作品を読んで「カドカワ的には、この作者さん取り逃す選択肢ないだろ」と思いました。俺が編集なら即契約ですよ。こんだけ書ける人を他に探せる気もせんし、その辺の新人捕まえてこれ書けるレベルまで育て上げられる気もしない。



37万字もあって全くだれていません。誇張ではなく「読むモチベーションが下がらないために、文字を追う速度が普段より早い」と自覚しました。あらゆる場面の終わりに興味を引くフックを忘れない心遣いを見せつつ、圧倒的な知識量にうらうちされた筆力、厚みのあるキャラクターと世界を書ききっています。
そう、書ききってる感じがするのです。書くべきこと全部詰め込めるだけ詰め込んで、その全てが面白いのです。



商業作家と比べても引けをとらない文章。エンターテイメント性を失わず、リーダビリティもかなり高め。格闘や狙撃&カーチェイスといった動きの激しいシーンもそつなく書いていました。
ハッカーという題材やネッ禁法という独自の単語から、専門用語の飛び交う物語が察せられて、見た目とっつきにくそうかと思います。でも実際読んでみると、引っかかるところあんまりないです。説明そのものも上手いですが、説明するタイミングも上手いですね。頭の中で前に説明された内容と今説明された内容を結びつけて理解できるよう、情報の並べ方が計算されてる感じがしました。


しかしプロットの精緻や、知能と知能のぶつかり合いのステージの高さもさることながら、単純にアツい。感情を揺さぶられます。この点についてアツいとしか言いようがないんですがとにかくアツい。




ネタバレ回避のためめちゃくちゃ曖昧に言いますが、急加速したらあれが折れて頭めがけて飛び込んできたけどあれが飛び出して身を乗り出したがために助かったシーンに「うおおおおお!」となりました。(伝わるんかこれ)

その他のおすすめレビュー

橘ユマさんの他のおすすめレビュー26