過去に十一人の恋人の心を征服した理乃のカレーライス。
一体どれだけ凄まじい破壊力を持つレシピなのかと興味津々で読みました。
結果、確かにいかにも家庭的で美味しそう…だけどそこまでのスペシャル感はない感じ?
でもそれはある意味当然といえば当然だったのです。
なぜなら、理乃の作るカレーは透弥という主人公にとってだけ特別な意味を持つものだったから。
透弥と理乃の恋は、ほんのりフルーティでスパイスが複雑な風味を醸し出す、結構辛くて奥深いカレーライスの味そのものだったのかもしれません。
二人のこれからの未来が、バーモントカレー[甘口]くらい甘いものになりますように。
カレーライス作りが得意の彼女と、カレーライスが何よりも好物という彼の、ちょっぴりスパイシーな物語。かと思いきや、驚愕する真実が語られたところから一気に展開が変わっていきます。
なぜ彼女には多くの彼氏がいたのか? なぜ彼はカレーライスだけを求めたのか?
切なく悲しい真実。
でも決してドーンと暗くなってしまうことはありません。
世の中からカレーライスがなくならない限り、二人の想いはハッピーな未来に続くと思います。
カレーライスを中心軸として描かれた珠玉のラブストーリー。
もし涙が頬を伝わったとしても、スパイスか玉ねぎのせいにしちゃいましょう。
立った場所が 不安定だったような錯覚に 捕らわれる感じです。
前半は、タイトルや 設定で、ラブコメなのかなって思うんだけど
後半は、急に色彩が ガラっと変わって、吸い込まれていく。
ニートなのに、11人の恋人? と ひっかかったままに後半に。
あれよあれよというまに、その謎が とけていき
自分だったらどうするんだろうと 涙しながら考えても
もう他の選択肢なんて 存在しないだろうなと 思えてくる。
お話の中に 一本すっと流れていくのは、素朴なカレーライス。
誰もが だいすきな 国民食の あれだけど、唯一無二の。
確かにね、どこのお店のよりも、自分のカレーが 好きだったりします。
たとえ、どれだけ刻を重ねても、或いは巻き戻しても。
物語の真相は隠し味さながら。
余韻の風味は、どれだけこの作品に入れ込んだかで味も変化するというもの。甘みも辛みも、ピリッと心にきたら、それは決して香辛料のせいだけではありません。
ラストシーン、絵が見えます。漫画化希望。
オトコノコはカレー好きだからね、しょうがないね、さながら胃袋にハットトリックぶち込まれたあげく、無慈悲スコアで完敗な気分。
焦って彼女の心にオフサイドしてはダメ、チェンジオブペース、ディレイ、ディレイ、慎重に、大切に、時間を重ねて、取り戻して欲しい。ディフェンスをはがして、はがして、キーパーもひきはがして、いつかゴールを。
私は、作者様の別の作品『彼女の愛は惑星より重い』を読んで「この人は恋愛小説を書くのが上手いなぁ!」と感動していたのですが、今作を読んでさらにその思いを強くしました。
まさしく、恋愛小説の名手・坂神慶蔵ここにあり、です。
この小説の主人公はヒロイン・理乃のカレーに完全降伏しましたが、私は坂神さんの紡ぎだす上質なラブ・ストーリーに完全降伏してしまいました。
なかなかインパクトのある小説のタイトルと「主人公はヒロインの11番目の恋人」というビックリ仰天な紹介文だけを読むと、「これは純愛ものじゃなくて変化球を狙ったラブコメかな?」と最初は思ってしまうかも知れませんが、いざ読んでみると味わい深く、読了した後も強い余韻を残す恋愛小説の名作でした。
美味しいカレーをむさぼり食べるかのように、一気に読んでしまいました。「おかわり!」と言いたいぐらいです。
あまり小説の内容を語るとネタバレになってしまうので詳しくは書けないのですが、私はこれから先ずっと美味しいカレーを食べるたびにこの小説のことを思い出してしまって涙したい気持ちになってしまうことでしょう。一緒に食べている人に「どうしたの?」と聞かれたら、タマネギのせいにするしかありません。
主人公とヒロインの未来に幸福とカレーあれ……。
最後に……
全国のカレー愛好者たちよ!
感動のラストシーンまで一気に読み、そして泣くべし!!!
この小説を読んで泣かない者は、カレー好きではない!!!
彼女は19歳にして11番目の恋人と付き合っており、4年間で16回告白されてモテモテだが、地味でニートな女の子。特技は美味いカレーライスを作ること。
主人公と彼女の、奇想天外なラブストーリーが展開されると思いきや、完全に(良い意味で)予想を裏切られ、物語は逆向きに現在から過去へと進んでいきます。
そして、彼女がなぜモテモテなのか、その理由について非常に予想外な真相へいざないます。
作者さまは、文章力が非常に高く、軽快なラブコメを論理的で一見堅そうな文調で執筆されますので、そのギャップがまたシュールで、読者を引き込んでくれます。
文句なしの★3つ。名作をありがとうございます。
とんでもなくキャッチーなタイトルにホイホイされました。
近年稀に見る、自分の好きな部類のタイトルです。
兵器という製法すら秘匿されて然るべき唯一性の塊と、
手作りとカレーライスという語句が組み合わさることで形成される味わい。
カレーの普遍性を説く描写があった事から、作者様の計算どおりなんでしょう。
ソコがストーリーラインと主人公のパーソナリティに繋がっていることから、
まさに一粒で三度美味しい設計になっています。やりますねぇ!
この面白い掘り下げ方と解釈が、他にもたくさん楽しめますので、
皆さんも是非この兵器を味わってみてください。めちゃくちゃ美味しいですよ! ではまた、今日もお疲れ様です。