ポラリスに臨む箒星

　ピポグリフとして生まれたブルームの成長を描いた、真っ直ぐで優しい物語です。
　この物語の中でまず魅力的だったのは、ブルームの直向きさに引き寄せられ、彼を支える人々が少しずつ増えてゆく様子です。関わり方も抱える思いもそれぞれ違う仲間たちが、互いに結束し合ってゆく過程に心が躍りました。
　また、幻獣の世界の描写についても、読んでいてとても惹き付けられました。
　多くの幻獣が住まう賑やかな街、繊細なこの世ならざる美の数々、そして遥かな目指すべき場所の神秘。
　ぜひこのレビューを読まれている貴方も、この美しい世界を、仲間たちとの友情の日々を、ブルームと共に駆け巡っていただければと思います。

　素…続きを読む

たくさんの幻獣が登場します。
まるで絵本の世界のような世界観。

ポラリスから聞こえる呼び声の正体を確かめる為に、仲間達と挑む危険な旅の先にあるのはーー。

人ではなく、空を思いのまま駆ける幻獣ヒポグリフが主人公のファンタジー作品。人間は一瞬話に出てくる程度で、作品内には生き生きとした幻獣たちの生き生きとしたファンタジー世界が広がっています。

純粋で主人公ブルームの一途な空の軌跡は、見る人の視線を奪って、ぐるりと世界を変えてしまう。少年から少しずつ大人へ成長していっても、ブルームの痛いほど純粋な空への想いは変わらず、それが読んでいる自分の胸にストンと真っ直ぐ突き刺さります。

箒星のように空を駆け抜けていくブルーム。読み終えても、消えたその光の名残にじっと目を凝らして探してしまうようにずっと余韻が残っています。かつて何にでもなれると純粋に夢見た…続きを読む

ほぉー、と唸らされました。
主人公がヒポグリフというのがまずユニークですし、また全ての登場キャラクターに一切人間がいない、エルフやドワーフのような人間に近い存在もいない、完全なる「非人間物語」であるというのが何よりも唯一無二感を感じます。
友好的な存在として描かれるならば人間に使われる家畜扱い、いいとこ行って人語を話せない相棒止まりであるヒポグリフですが、同じ牧場の馬たちや他の幻獣らと共通の言語で意思疎通ができているというのが、なんとも優しい絵本の世界のようで、温かみを感じます。
そんな主人公のヒポグリフには、どうやら出生に特別な秘密があるようで……。
その血は争えないのか、徐々に雛とも若駒…続きを読む

本作の特徴は、なんといっても人間が一切出ないこと。
主人公のヒポグリフをはじめとした、我々で言うところのモンスターである「幻獣」たちが、時に平穏に、時に波乱に満ちた生活を営んでいる、そんな作品。
彼らはまるで人間のように、お店を開いたり、郵便配達したり、自警団を結成するなどして、非常に文明的な生活を営んでいるのだが…………人間の悪い部分も一緒に輸入してしまったみたいで、権力を使って横暴にふるまう者もいたりする。

そんな幻獣たちが、十人十色で生活を営む中、ヒポグリフのブルームは、偉大な冒険家だったと言われる父の姿を追い求める為、若くして様々な無茶を経験していく。
彼がこの世界の空の果てで、果…続きを読む