とある森の奥深く。禁足地として恐れられ、誰の手も届かない未踏の地。
そんな魔境で暮らしていたのは、なんてことのない、幸せな親子だった――――――
そのような切り出しから始まる本作。読書においてこの表現は謝りだと捉えられるかもしれないが、「見ていて」とても微笑ましいのである。
実際に目の前で子供が朗らかに走り回り、それを幸せに眺める魔女の温かい感情を追体験しているような。然もすれば己が魔女の視線を通して、危なっかしくも可愛らしい子供が笑いかけてくれる様子を見ているような。
非常に不思議な感覚を覚えた私は、気付けば充足していた。
母の子を気遣う想いが真っ直ぐに伝わってくる。子供と共に暮らす生活はただただ楽しく、愉快で、幸せに満ちていて、何気ない雑草や、料理でさえ華やかに見えた。
このように、あたかも目の前で物語が展開されているかのような錯覚を覚えるほど本作はクオリティが高い。ごく普通の日常であるのに、豊かな描写と表現が魔女と子と(番犬の)心地よい物語を紡いでいる。非常に尊い。
個人的にスローライフは好まなかったのだが、純粋にこの作品は好きだ。今後の物語がとても気になる。
皆さまもぜひ、読んでみてほしい。
人々がそう恐れる禁足の地ボーダナン大森林。そこに住むのは、世界最強と謳われる《混沌の魔女》だった。
けれど、森の奥深く。
誰も知らない場所で、魔女はただひとりの少女を抱きしめる。
「お母さん!」
無邪気に駆け寄るのは、魔女に育てられた小さな獣人の子・リル。
耳と尻尾をふりふりさせながら、お母さんのスカートにしがみつくその姿は、誰が見ても可愛らしい。
剣の稽古で大はしゃぎ。初めてのジャム作りに失敗して落ち込む。
魔境の森で、最恐と最愛が紡ぐ、穏やかでかけがえのない日々。
だけど、この世界は静かな幸せを許してくれるだろうか?
魔女と獣人の少女が歩む、優しくて、強くて、どこか切ないスローライフファンタジー。
魔境と呼ばれるボーダナン大森林の奥の奥、一人の魔女と、獣人の子供が、慎ましくも楽しく暮らしていた──というあらすじの本作は、読みごたえのあるスローライフ作品だ
菜園の雑草抜きからジャムの製造に至るまで、ごく丁寧に描かれており、一人の家族として彼女たちと共に生活している気分になれる
そして、本作の特筆すべき部分は、獣人の子であるリルの可愛らしさだろう
リルの言動は、まるで本物の五歳児のようにリアリティがあり、しかし本物の五歳児が時折見せるような憎たらしさは剪定してある
まさに理想の子供、主人公の魔女が溺愛するのも当然といったキャラクター造型なのだ
とにかく可愛いリルと、彼女にでろ甘かつ厳しく育てねばとも奮起する魔女の、生き生きとしたスローライフ
皆さんも一度、遊びに来てはいかがだろうか
ほっこりとした日常を感じました。
ワシ自分がどうも暗い作品を書いているもんですから、腰は痛いし背中は凝るし、しかし、この作品に温かいエネルギーをもらった感じです。なんか元気になってきました(※個人の感想です)
魔女の母親が獣人の少女リルに仕事を教えたり、彼女の挑戦を見守ったり。
リルの素直で無邪気な性格と、それを優しく見守る母親の描写が、物語の最大の魅力かな。
ジャム作りのシーンが出てきますが、その描き方が温かくてまた上手で、ほんとに読んでるこっちもリルにつられて大変だなって感じてきちゃうんですよね。
それでお母さんが魔法を使って効率化してくれるわけですが、こういうカタストロフィの書き方もあるのかと、感心してしまいました。すごいなって。
このあとどんな展開になるのかな。
このままほのぼのでもいいけどなー。
少女リルもきっと大きくなっていくんだろうな。ふふ。楽しみです。