終末の日に七人の天使がラッパを吹く──
これは、大概の方が厨二病のおりに履修する内容ですね。
この作品、そんなラッパ担当の天使の一体のお話です。詳しくは紹介文を読んでいただくとして、でも難しい内容なんじゃないの……? って心配の必要もありません。
とても平易で分かりやすく、そして丁寧に優しい語り口で書いてあって、また聖書の知識も読んでいるうちになんとなく理解できた気がするくらいに、とっても親切な設計になっていますからね。
宗教を題材にしていすけれど、まったく押し付けがなく、楽しく安心して読めて、また読後感もいい。完結済みという点も安心です。
ほのぼのしたい方、よかったら試しに読んでみてくださいね。
紹介文のあらすじだけでも、もうホノボノできますから、これは本文に進むっきゃない。
心のある良い作品でした。
読み進めてまず感じたのは、作者様が綿密に調べものをされているという点で、その丁寧さに大変感銘を受けました。
ヨハネの黙示録をベースにしながらも、ユーモラスで親しみやすい切り口で描かれた物語に引き込まれます。
終末世界の象徴である“ラッパ吹きの天使”が、不安症で地上のメンタルクリニックに通うという発想は、とにかく新鮮で面白いです。
聖書のモチーフや天使・悪魔の描写には、しっかりと調べられた知識が活かされ、背景設定に強い説得力があります。
また、キャラクター同士の掛け合いは軽やかで、シリアスな題材でありながらも温かみを感じられる点も魅力的です。
聖書という深く重たい題材を扱いながらも語り口は優しく、登場人物たちの心にそっと寄り添うようなお話でした。
主人公マグデュエルは不安症でメンタルクリニック通いの天使。
終末世界の到来を告げるラッパを吹く使命を持っていますが、その吹き時が分からないまま2000年が経過しました。
残念ながら現代は西暦2000年を超えて続いていますので、世界は滅びること無く延々と平和な時を重ねています。
そんな終わらない平和な世界を不安を抱えて生きている主人公は、どこか私たち人間と似ているのです。
他の登場人物も同じで、それぞれ日々悩み苦しみ、楽しみながら生きています。
この作品は救いや終末といった聖書的なテーマを背景に、不完全な存在たちがどう生きるかを、優しくユーモラスに描いた現代の寓話です。
宗教を知らなくても、今の時代にこそ響くメッセージが確かにここにあります。
ビジュアル重視の天使や悪魔が登場するかと思いきや、骨太の聖書解説に伴い、その知識を含めて登場人物のすべてが、読み手の想定斜め上をいく改作です。
聖書が好きなアナタにも、聖書を読んだことのないアナタも、うっかりミッション系進学校に通ってしまって神学の授業で苦戦しているアナタにも、大変おすすめ。
そもそも宗教的内容は好できではないと言われるそこのアナタには、メンタルがどこまでも人間的(しかも欲に負けやすい)な天使の姿に、心励まされ明日も頑張ろうかなとか思えることでしょう。
最後まで読み切った時に「エリ、エリ、レマ、サバクタニ」という悲しみの言葉さえも別解釈出来ること間違いなし。どうぞご覧ください。
天上に住まう天使・マグディエルは、「第一のラッパ吹き」として生を受けた。
しかし、金色のラッパを握りしめる彼に、「その時」が訪れる気配はない。
誰も時を教えてくれない。神は語らず、使命の意味も答えられない。
やがて彼は、疑念に囚われる。
本当に自分は、吹き手なのか?
自分は、神に選ばれた者なのか?
そもそも……神は、いるのか?
仲間の天使たちは、疑うことなく使命を信じている。
だが彼だけは、信じることに疲れ、恐れ、不安の深みに堕ちていく。
神の御座を探す旅。
語られぬ「導き」を確かめるために。
これは、迷い、傷つき、それでも祈りをやめなかった天使の物語。