概要
神と人が共に生きる列島国家・常世国では、神の代替わりと同時に術を持つ複数の巫女を後宮に招き、成人の儀式で正式な花嫁を選ぶというしきたりがある。
澄珠《すみ》は、八つの時に契約して後宮入りし、花神とは幼なじみのように育った、花神の最初の花嫁候補。花神の様子が突然変わってしまったことに疑念を抱き、偽物ではないかと疑うが、後から後宮に入ってきた妹の琴に寵愛姫の座を奪われ――。
何かを隠している様子の他の二人の花嫁候補と、花神・千夜との思い出の場所にいつもいる、煙管をふかす謎の男。
この後宮には誰をも惑わす偽りの花が咲いている。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!美しい言葉の裏に隠された意味を謎とともに解いてゆく和風浪漫ファンタジー
花神を祀る国、物語の舞台を語るのにふさわしい美しい文章で綴られた物語。
幻想的な世界と、そこに住む神と巫女、神官たち。
美しい彼らは、必ずしも美しく清らかなわけではなく、ヒロインは苦悩の中に落とされています。
花神の妻となるはずだった彼女は人々の醜さに傷つく中で、とある男性に出会います。謎めいた彼との逢瀬に心を揺らすヒロイン。
誰が味方で、誰が敵なのか。
どこからが真実で、どこまでが虚構なのか。
偽りの張り巡らされた世界でヒロインは真実を取り戻すために戦います。
文章の美しさと謎めく物語の構成も素晴らしいのですが、やはりこのロマンチックな世界に浸らせてくれるストーリーとキャラが良い!
…続きを読む - ★★★ Excellent!!!偽りの中から真実の愛を見つけ出す和風ロマンス
神の花嫁候補として後宮入りした主人公が、ヒーローへの想いを貫きながら奮闘する和風ロマンスファンタジーです。
タイトルにある「偽り」が何を指しているのか、本当の敵は誰なのか、読めない展開に最後までドキドキさせられました。
豊かな自然と特殊な世界観を余すことなく表現する美しい文章で、序盤から読者を一気に物語の中へと引き込んでくれます。
その中で息づくキャラクターたちもまた魅力的であり、ストーリーを進めるために配置されたような薄っぺらい人物は出てきません。
主人公も、敵も、味方も、皆ちゃんとした人間です。
各々が自分の意思を持ち、考え、行動した末に掴んだ結末に、胸が温かくなりました。
登場人物…続きを読む - ★★★ Excellent!!!和風ロマファンを、超えてくる。
読了後すぐ、まだ興奮で震える手でこれを書いています。
物語の筋は紹介文なりキャッチで知ることができると思いますので、省略します。
わたしが伝えるべきは、このおはなしの、とんでもない凄さ。
最初のうちは、ああなんてきれいな文章なんだろう、楽しいなあ、嬉しいなあって、わくわくしながらコメントを入れさせていただいてたんです。
でも、中盤以降はただただ、次を追うことに夢中になってしまいました。感想を挟む間がなかったんです。そうしてとうとう、そのままラストに辿り着いてしまいました。それくらい、すごい物語でした。
凛とした涼やかな文章で、情景から一歩引いたように描写される美しい世界。そこで起こるさ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!花の香り漂う想いと共に
神の花嫁候補として、八歳で後宮入りした澄珠(すみ)。
花神である千夜と共に幼い頃を共にして、互いに信頼だけではない何かを確かに紡いでいたように見えました。
しかし現在、寵愛は澄珠の妹の琴が享受する日々。
澄珠の苦しみがありありとして、記憶の中にある思い出がまた、澄珠を苦しめているようにも見えました。
二人の姿は幼く微笑ましくも、淡い想いの色が確かにあったような――そんな事ばかりを考えて、お話の先が気になって仕方がありませんでした。
そんな時に澄珠の前に現れた花影。
千夜に似ているけれど違う人。
花影と過ごす花庵の時間は淡い思い出の色を取り戻したかのようです。筆者様のうっとりとするような文章…続きを読む