神から『柔軟な身体』、『コーディネーション』、『超回復』という三つの特典を与えられて現代に転生した皇拳聖。運動の分野なら何をやっても成功するであろうチートを手にした彼が選んだのは父親と同じボクシングの道! ここに日本初、いや世界初の9階級制覇を目指す男の物語が幕を開ける!
本作の読みどころは何と言っても拳聖の圧倒的な才能による快進撃! ただでさえ強烈な特典を持っているのに、さらに前世の記憶があって精神的には大人だから、子供のころから地味なトレーニングにも耐えられるし、慢心だってしない。こんな奴に普通のボクサーが敵うはずがない!
おかげで序盤の日本編では圧倒的な無双っぷりが楽しめるの。しかし、物語が世界編に突入すれば、対戦相手は各階級のチャンピオン。どいつもキャラが立っているし、試合の内容も一筋縄ではいかなくなってくる。またボクシングでは避けては通れない減量の問題、さらには学業との両立など試合以外の部分で苦しめられる展開も。
それでも終始明るく元気な拳聖の語り口が読みやすく、物語も拳聖の快進撃に合わせてスイスイ進むため、テンポよく爽快感を味わえるのが嬉しい。泥臭さやハングリー精神などの昔のスポ根のようなイメージとは一線を画す、明るく現代的なボクシング小説だ。
(「スポーツの秋! スポーツ小説特集!」4選/文=柿崎憲)