ちょうど一年くらいです

 恒例の定期通院の日だった。通い慣れているし、話し慣れており、帰り道には安いスーパーにも寄れて、すっかり大好きな通院だ。

 近頃、ちょうど一年前のことをちらほらと思い返す。体調を崩し、病院にかかり、睡眠薬で無理矢理に眠りと、絶不調だった時期がちょうど一年前だからだ。

 あれから一年……。

 そう考えると本当に体調が良くなってきた。すっかり来なくなっていた生理は無事に復活したし、しばしば起こっていためまい吐き気は最近まったくない。起きても「ちょっとふわっとするかな?」くらいで終わる。ぐわんぐわんおえーっ!!ばたんきゅー……だった頃を思えば雲泥の差である。

 あの頃はね、すごかったね。今はとりあえず六時間から七時間は眠れているが、午前四時頃に強制的に起こされていたのは辛かった。

 めまいはふわっとするかなどころではなく脳が完全にバグっている感覚で、文章を読んでも音声を聞いても内容がまったく理解できないし突拍子もないことを言われている気にもなるという、ひとりマジックリアリズム状態になっていた。


 現在は日常系現代ドラマだ。体調が、誇張ではなく確実に良くなってきている。

 とはいえ調子に乗ってはいけない……。戒めながらすっかりセカンドホームと化しているクリニックへとやってきた。


「こんにちは、先生」

「はいこんにちは、調子はどうですか?」


 私はニヒルに笑っているドクターに、冒頭に書いたような調子の良さを伝えた。

 ドクターは頷き、パソコンで何かしらを入力し、私の快調を喜んでくれた。ドクターの夢女もどきになっているのでちょっと浮足立っちゃった。


 定期的に推しに会えるって最高やんけと思いながら次回予約を取り、続けていつものカウンセリングへ。

 二人目の推しであるOさんは今日も穏やかに迎えてくれた。

 最近はどうですかといつも通りに聞いてくれて、私もいつも通りに最近はこうですと話し出した。

 おおよそ、冒頭に書いた感じの「なんだか最近いけそうな気がする」という話だ。

 まあせやけどこう、あれだった。


「嵐の前の静けさ、という感じもあるんです」

「おっと……何かあるんですか?」


 私は頷き、話した。詳細は割愛せざるを得ないのだが、今はちょうど、そんなにやることがない期間なのだ。だからちまちまと買ったパソコンをいじってみたり、まったく読んでなかった小説を読み進めたり、ぶらぶらと近場を散歩したりと好きに過ごしていたりする。


「それに加えて、最近はよく一年前のことを思い返していまして。去年の今頃は本当に絶不調の極みでして、今の体調の自分と比べるとぜんぜん違うから、こう、去年はやばかったな……と感慨にふけると言いますか……あの状態には戻りたくないなと改めて思うと言いますか……」

「本当に辛かった時期なんですね、今がかなり快方に向かっているのであれば本当に良かったです」

「はい、いやもうここに通いながら色々話も聞いてもらって、やっとここまで治ったって気持ちがすごいです」

「わはは、僕もなにかの力添えになれていたならいいんですが」

「めっちゃ話を聞いてもらってめっちゃ助かってます本当に」


 食い気味に言ったらOさんははにかんだ。か、かわいい。推しの笑顔、いつまで経ってもプライスレス。


 この後もメイン仕事の愚痴やら、忙しくなってきたらまた話を聞いてほしいという願いやらを話した。

 時間になって退室し、今日もたくさん話してすっきりしたと思いながらクリニックを出ようとしたところで、今日一番のおどろきに見舞われた。


 クリニックの真横にあった薬局がよく見ると閉まっている!?


 焦っていると受付のお姉さんが薬局の移転を教えてくれた。何軒か先にリニューアルオープンしたらしく、行ってみると祝いの花がたくさん飾られているものすごく綺麗な薬局ができていた。

 受付にはすっかり顔見知りになったお姉さんがいた。

 ほっとしつつ新しい店舗に入り、薬をもらって、今日の通院は無事に終えたのであった。


 このまま快方に向かい続けますように!!

 また会いましょう。

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あっちこっち診療日記 草森ゆき @kusakuitai

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