文体が、なんともミステリーっぽく、けれども軽妙で洒脱で、読みやすく、時にジョーク混じりの会話が読んでいて心地いいです。
また、見た目が不味そうなのに、食べると美味しいものの描写が非常に愉快です。
フィアーとラズリーの関係も、甘くないのが楽しいです。
第一章では、ニコラス氏という料理人が、大食い野郎どもを一泡吹かせるべく一計を案じていますが、その動機に私は心から賛意を贈りたいです。
それにしても、フィアーが大好きなペリエ(炭酸水)は美味しいですよね。近ごろは為替レートの変動や裁判などがあり価格が上がり、置いてあるお店が減って寂しいです。
このレビューは第一章を読み終わった時点で書いております。続きを読むのも楽しみにいたしております。
本作は、「嘘をつく者が真実を暴く」という逆説的な構図を軸に展開する、軽妙かつ危うさを孕んだエンタメ・ミステリーである。
舞台は1919年、戦後の余韻が残るロンドン・ルイシャム地区。
元詐欺師フィアーは、借りたアパートを探偵事務所に仕立て上げ、誰に頼まれたわけでもなく「世界一の名探偵」を名乗り始める。欺くことに長けた男が、見抜く側へと転じる――その発想自体がすでに不穏で、そして同時に強烈な魅力を放つ。
自信過剰で口八丁なフィアーは、幼馴染のラズリーの一言からの解決の糸口や依頼人の思惑、時には犯人の行動言動すら利用しながら事件に介入する。
その姿は痛快でありながら、常に破綻の危険をはらんでいる。
だが彼の真骨頂は、疑われ、追い詰められた局面においてこそ発揮される。
狡猾さや胡散臭さといった本来なら欠点と見なされがちな資質を、理詰めと話術によって一気に反転させ、周囲を納得させてしまう論破力は鮮やかの一言だ。
嘘を知り尽くした男だからこそ辿り着ける結論があり、その危うさすら読者には魅力として映るのだ。
本作の大きな魅力の一つは、ヒロインであるラズリーの存在だ。
可愛らしい佇まいの裏に、したたかさと鋭い判断力を秘めた彼女は、単なる相棒や保護対象に収まらない、フィアーの暴走を冷静に見極め、ときに手綱を引き、ときに彼以上に先を読む。その頭の回転の速さは物語に心地よい緊張感を与えている。
英国的ユーモアと皮肉に満ちた語り口の奥には、「真実」と「嘘」、信頼と利用の境界を問う視線がある。破天荒なトリックスターと、聡明で油断ならないヒロイン。その二人が織りなす化学反応こそが、本作を忘れ難い一作にしている。
腰を据えて、あるいは一息に読み進めたい物語だ。
わたしはこれまでミステリーや探偵ものを敬遠しておりました。
殺人事件ばかり殺伐しており、純粋に楽しめない。どこかに、ヒトが死なない、けれど推理とか騙しあいが面白い、そんな探偵作品ないかなと嘆いておりました。
ここに、ありました。
この作品こそ、わたしが探していた探偵ものです。
ヒトが無意味に死なない。このおかげで、気持ちよくストーリーが楽しめます。キャラクターの会話も軽妙で心地いい。地の文章も、非常に面白く、小気味いい。
すらすらと読み進められます。
ほぼ1日で、第2章まで読み終えました。
ストーリー構成も秀逸で、本当に作者様の力量の高さには脱帽いたします。
☆3かー、正直言えば4をつけたいくらいです。
強いて不満を申せば、褒めるしかできない自分自身の浅はかさを思い知ること(笑)
こんな素晴らしい作品を送り出してくださった作者様に、心よりの感謝を!
👏👏👏
題名読んだ時好みじゃないかもなーと正直思いながら読んだのですが、第一章とても面白かったです。
テンポがいいですね あとバランス感覚がいいなととても感じました
読み始めた時には勢いだけで押してくる感じかなーと思いましたが、そうじゃなかった!
フィアーも押してくるしか能がないタイプかと思ったらこの人たまに素で相手誉めたりしてるんですよ。
柄の悪さと傲慢さ丸出しなんですけど、おめーさては根は素直なとこあんな? って思えるところ、人間的な可愛さを持ってるので読めました。
こういう「俺は世界一の探偵だ!」なんて言ってるのは、真面目に世界一の探偵だったら全然可愛げなくて愛せないんですよね。
しかしながらフィアーが人間としてガチャガチャしている面を見せながらも「どんな依頼だろうととりあえず引き受けたら体張ってでも解決してやるって根性を見せて来る」ところが非常に愛くるしいので、そういう人間性にも好感が持てました。
なんでしょうかこれはあえて題名を「なんだ……今どきの流行りかよ……」と思わせといて実際読んでみると いや! これはちょっと流行りだけの虚無とは違うぞ!?✨✨と思わせる騙し絵作戦なのでしょうか?
あと探偵ものでこんな解決しなくてもどうでもいい話で第一章から仕掛けて来る発想が小気味よく、人が死ぬ恐れもなく、殺される恐れもなく、解決できなくても高飛車な兄ちゃんの胃がパンパンになって大損するだけかと思ったら身構える必要全くなく読めたのが楽しかったです。
特筆したいのがラズリー嬢。
フィアーとニコラスだけの話だったら男だらけのどうでもいいロンドン発の相撲大会みたいな雰囲気になりましたが、ラズリーの女ならではのエレガントなスパイスが効いてるので、ともすれば温度上昇しかしない室内の温度をいい頃合いで調整してくれる感じが心地よかったです。
フィアーとの掛け合いとてもいいですね
人間の容姿(かっこいいだのきれいだの)の描写で得点稼いで来る気が無い感じ素晴らしかったです。話を読みながら何回か「可愛いなオイ」って呟いちゃったんですが、それ全部人間の言動に対してのことでした。
小説ですとやたら昨今人物の容貌賛美するようなものも多いですが、
人間の言動やセリフでインパクトを与えて来る書き方とても素敵でした。
ラズリーはマイペースに書かれている印象でしたが、
男たちが真剣(?)に遣り合ってる中で特に食わんでもいいのに食いながら優雅にフィアーの動向眺めてる感じ、話の中で女性を一番マイペースに描く、というのが私の好みに非常にガツンと来てくれました。
まだ第一章を一気に読んだだけなので、
この話にこちらの物語の真髄がどれだけ反映されてたのかは謎なんですが、とても面白かったです。テンポよく、小気味よく、
悪人一人もいねえ探偵ものっていうのが第一章非常に良かったです。
セイ、チーズじゃねえよ 人の愛するロンドン舞台でなに好き勝手やってくれてんだと思いながらも、真面目になにやってんだをたまに見せて来るイギリス感とても出てて、登場して来る人間たちが生き生きと好き勝手な言動しているところが最大の魅力でした
この第一章ですと、第二章に掛かる期待かなり大きくなると思いますが、ぜひ頑張って欲しいと思います!