概要
※ 4/9 大変申し訳ございません。一箇所うっかり更新してしまいました。
更新箇所は「今頃、何で彼の夢など見たのだろう。」→「今頃、何でヨウタの夢など見たのだろう。」です。「彼」→「ヨウタ」です。
差し障りがあるようでしたら、取り下げますので、ご連絡ください。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!恋と愛とは、『趣味』と『仕事』ほどの差がある。
個人的な思想ですが、
「私は理系だから」と言う人ほど、文系然としていると思うのです。
だって、自分でそう言うことを言うって絶対面白い人じゃないですか。
……脱線しました。失礼しました。
主人公は、漁師の家に入る未来を受け入れずに、婚約者からのプロポーズを断り、
やがて就職してから結婚し、十年以上の結婚生活の末に「子供を作って仕事ができなくなるなら」と言う理由で離婚をした。
自分は、自分の望んだ道を進んでいると信じて進んでいた。
だから後悔はなかった……はずだった。
夢の中で見る、菜の花とあの人の姿がどうしても頭から離れなくて、
主人公は、かつて彼と過ごした神戸に向かう……。
…続きを読む - ★★★ Excellent!!!隔たる月日、重ねた時間の愛しさよ
若い日に愛した人の夢を見る。
主人公のように40代、離婚歴アリの女性なら、そんな心ざわめく日もあるかもしれない。
あの人どうしているかしら。かつて彼と訪ねた蕪村の句ゆかりの地へ向かうセンチメンタルジャーニー。菜の花が咲き乱れるその場所で待っていたのは……という、それはそれはロマンチックなお話なのです。
何も起こらなかった歳月は、必ずしも何もなかった時間ではありません。
一緒にいることだけが愛というわけでもないのです。
そういう静かに積もってきた情というものを、美しく、豊かに描いた作品です。
夢物語でありつつも、オチはオシャレかつリアルで、この匙加減もステキ。
皆さまも一緒にうたかたの夢…続きを読む - ★★★ Excellent!!!蕪村の句に導かれし月と太陽の燦たる邂逅
美しい月を思わせるツキミと、朗らかな太陽を思わせるヨウタ。二人は結ばれるはずだった……そんな恋人の時を越えた美しい物語です。
与謝蕪村の俳句「菜の花や月は東に日は西に」が重層的に織り込まれ、物語に巧く調和するだけでなく、タイトルの意味が読者の心に浸透させる構成力の高さが伺えます。
夢見に慕う想い人に読後感の余韻さえも心地よく、思わずイメージしたくなる光景があります。
それは春の夕暮れ時、摩耶山の上から見下ろすと一面の菜の花畑が黄色い海を思わせ、空を見上げると月と太陽が同時に見える幻想的な光景です。満月の条件が揃わないとお目にかかれない大変貴重な現象だけにとても印象的です。
幾星霜を…続きを読む - ★★★ Excellent!!!しっとりとした情感と、美しいイメージで紡がれる物語
何もかもが美しい。それが一番の感想でした。
主人公の『ツキミ』が菜の花畑の夢を見る。その中に、かつて別れてしまった恋人の『ヨウタ』の姿がある。
「菜の花や 月は東に日は西に」という与謝蕪村の句と共に綴られて行くこの物語。
「夢に出てくる相手は、自分に会いたがっているものだ」という、平安の頃に語られていた話も出てきて、しっとりとした情感と共に、ツキミが夢と向き合うことになっていきます。
その先で彼女が迎えることになる転機。
色々とうまくいかない日常。すれ違いの多かった人生。そんな雑多な中で、奇跡のような夢を見る。
蕪村の俳句が美しい。平安の逸話が美しい。それになぞらえる…続きを読む