本当に、どこかに落ちてはいないのか。どうにか見つけてやれないものか。

 ミステリアスな冒頭から、一挙に引き込まれます。

 ある日、一人の子供が途方に暮れたようにしているのを見つけた主人公。
 どうしたのかと声をかけると「落し物をした」と答えが返る。それは大切なものなので、見つけるまでは家に帰れないと言う。

 何を落としたのかと問うが、明確な答えは返らない。どうしたものかと悩む主人公だったが……

 「落し物」の正体がわかった時、やるせないような気持ちにさせられます。
 どうにかして、この子の問題に答えを出してはやれないものか。事実を知ってしまった主人公は、その後はどんな気持ちで過ごすのだろう。

 あれこれと考えさせられる、強烈な余韻を持った作品でした。