帰郷。そして昂揚感あふれる旧友たちとの再会。その先で彼が見たものは……
- ★★★ Excellent!!!
昂揚感からの衝撃、という強烈に心に来る作品でした。
社会人として過ごす主人公は帰郷し、かつて過ごしていた土地に戻ります。
母と会い、自分の部屋が物置になってしまっているのを見る。そして、サークル仲間たちとの久しぶりの集まり。
この辺りの展開、とても昂揚感があります。
帰郷して、昔の仲間たちと会う。高校でも大学でもいいから、自分が過ごしていた「思い出の場所』に行って、懐かしい友人と会う。そういうのは「現在」とは違う、忘れていた何かを呼び起こしてくれるようで、自然と胸の中があたたかくなる時間を味わえるものです。
だから作中のサークルメンバーとの交流のシーンなどを見ると、読む人の心の中には懐かしい誰かの顔などが浮かぶかもしれません。たまには同窓会みたいなものにも参加してもいいかもな、ということを考えるかも。
特に北海道なまりが良い。「なまら~しょ!」の言葉で喋る人が出てきたことで、ノスタルジックなあたたかみが強まります。
そして、そんな昂揚感溢れる展開からの……。
幸せムードいっぱいだったからこそ、水面下で動く「何か」が形を取り、結末に向かって行く感じが強い衝撃を生みます。
彼らにはもっと別の結末はなかったのか。うまく折り合いをつけ、仲良く砂糖味のアメリカンドッグを食べるような未来はなかったのか(北海道ではそれが主流)。
怖さと同時に、想像すると悲しみも生まれる、しみじみと印象深い作品です。