花蕊の宿

2-3 インタビュー記録

この段は田中 芳江さん(仮名)失踪事件に関する、関係者へのインタビュー記録をまとめたものになります。聞き手は全て筆者(市川)です。また、事件性の高さより、関係者の方々のお名前は一律して仮名であることに留意してください。


インタビュー記録① 話し手:吉澤 恒子さん

筆者:田中さんとのご関係を教えていただけますか?


吉澤さん:田中先生は、私が大学4年生の時の、思想史ゼミの先生でした。だいぶ良くしてくださって、提出期限伸ばしてもらったりとか……


筆者:今回の事件については……


古澤さん:聞きました。確か、先生は5年前に地元に帰ったっていうのは聞いてて、それがウチの近所だったものですから、一度ご挨拶に伺おうかと思ってたんですけど。その矢先に……。


筆者:そうすると、事件との直接の関係は?


古澤さん:ないですね。ただ、警察の方が家にいらしたことがあって。


筆者:聞き込みということでしょうか?


古澤さん:そうなんです。つまり―ええと、これが今回調べたいことの中心みたいなところだと思うんですけど


筆者:というと?


古澤さん:とても変なことを訊かれたんです、その……


筆者:変なこと、ですか


古澤さん:花蕊の宿という旅館を知っているか、って


筆者:ああ、それで私の記事を……。


古澤さん:そうです。ただ、私はそういうお店は聞いたことがなくて、同じようなことを訊かれたご近所さんも、やっぱりそんな旅館はご存じないっておっしゃってましたから……。


筆者:気になって、花蕊の宿について調べられて私の記事を見つけられたんですか


古澤さん:はい、それでご連絡させていただきました。


筆者:それで、警察の方は、どういった事情で花蕊の宿について訊かれたんですか?


古澤さん:なんでも、田中先生が行方不明になられた日に、花蕊の宿に行くっておっしゃってたそうです。


筆者:そうでしたか。ご近所の方々とはこの件についてどのように?


古澤さん:ええ、なんというか、やっぱり変な話ですから、結構みなさんお調べになられてるんですけどね……。


筆者:そうですね。私も長いこと調べていまして、情報も結構集まってきてるところなんですね


古澤さん:調べ始めてもう十数年とお聞きしましたけれど、どなたか行方不明に?


筆者:ええ、地元の同級生の娘さんです。


古澤さん:そうですか、いえ、それは熱心なことですね。そうなると、そろそろですか?


筆者:ええ、私もそろそろ花蕊の宿に行こうかと。


古澤さん:そうでしたか、わかりました。


筆者:もしなにかわかりましたら、ご連絡させていただきますので。

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