唯々諾々

……そうですそうです、あこはあかん。あこの池のところは、昔小学生の子らがなんや足滑らせて亡くなりはったって。ほんでようやくよ? 最近になって町内会の方で予算の目途が付いたからって柵を建てましょかいう話になったんです。それでお役所の方でのね、ホラ、面倒な手続きなんかも会長さん―そう、そうです、ハルちゃんのとこのお父さん。よう働いてくれはってね、春に話し始めて、もう夏には着工できるいうことになったんですよ。施工しはんのはね、あそこあそこ、エエト、そう、原田さんのところやね。そこの若いのがね、事前調査かなんかで……六月の末やね、池に行ったらしいんよ。そうしたらね、かえってこんかったって。原田さんもちょっと昔気質なところある人やからね、嫌になって投げ出したんかァ言うて怒ってはったわ。ほんでせやから次の日に原田さんがね、息子さんの保夫さんと一緒に池の事前調査行かはってんな。そしたら、次はふたりがかえってこんかったって。ね、気味の悪い話やろ。ほんで原田さんとこの奥さんが、これは流石におかしい、頼むから手ェ引かせてくれって言うてきはったんです。まあ私らもね、こないなったらよォ続けられんくてね、申請の期限が切れたこともあって、柵建てよういう話も立ち消えなったんです。それで……そう、今回の話やね。ハルちゃんもお父さんからよう言われてたやろうにね、お友達と一緒に池ンとこ行ったんやって。学校で聞いた子がおるらしいわ。そう。結局かえってこんかったって。


……え? 見つかったんかって? うん? どういうことです?


ああ、ちゃうちゃう、行方不明になったんとちゃいますよ。いうたでしょ、かえってこんかったんです。

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