自然淘汰

―ええと、ちゃんと繋がってますかね? すみませんね、スマートフォンに買い替えたばっかりで、ちょっとよくわからなくて。ええ、ええ、大丈夫ですかね? よかったです。うん、うん。聞いてます聞いてます。ヨシエさんとこの話ね、あそこももうあかんからね。お兄さんは、それを調べてるん?……そう。まあね、気になるんは分かるけど、ああいうんは関わらん方が良いっていうのは、ヨっちゃんも言うてませんでした? ああ、そうです、この連絡先教えた。

 ……ああ、そっかヨっちゃんのとこの娘さんの話聞かはったんやね……。ヨっちゃんは諦めてなかった? そう……。


じゃあ、私の知ってることでよければ話します。ヨシエさんとこの旦那さんと息子さんね、そう、最初おかしくなったんはもっと別の人やったとは聞いてますけど、結局なんて言うんやろうね、それが伝染ったみたいなことなんやろうね。


そうです、あそこの池ね。きっとアレがあかんかったんやろうね。……いや、私も出身が違いますから詳しくは知らんのですけど、なんや昔にも小学生が何人か足を取られて……っていうのは聞きましたから。あの頃から、あそこにはなんかあるんちゃうかって言う話はあったんです。


お兄さんくらいの年の人やと、どう思うかわからんのですけどね、正直、私らの間では、あそこは土地が良くないって。もっと言うとね、あそこにおると、よくなくなるんです。なんていうかね、ちょっとずつおかしくなっていくっていうのか。実際、ヨシエさんも最後会うたときはだいぶ……参ってるっていうんか……。そうです。


……あそこの謂れですか? いや、そこまでは知りませんね。でもなんやったか、昔どっかの集落から越してきた人が興したみたいなのは……。ええと、そうね、あそこやったらなんかそういうん書いてあるかもしれません。そうそう、郷土資料館みたいなのが、山の麓の神社さんのとこに併設されてて。


……行かはるんですか。わかりました。その、気を付けてくださいね。

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