奇々怪々

そうです、そうです。あそこの町のことでしょう。あそこはなんか前からおかしくってね、内々でもあそこの施工はやめとこうって話でね。まあ、意外とこっちの業界って多いですよ、そういう話信じてる人。地鎮祭とか、形式でやってる部分もありますけど、あれで心底大事にしてるヤツも多いですから。ああ、ええ、それで、はいはい。ご家族の方があそこに。ははあ、それは大変ですね。ええ、ウチもそうでしてね。去年、そうです、3回生になった時にね、なんですか、息抜きに友達と出掛けるんだって言ってね。

やっぱりそうですか、突然ね。そう、ウチもおんなじ感じで、なに、急に言って、その日のうちに荷物をまとめていくもんですから、驚きましてね。そう、そのままです。かえってこなくて。うん。そちらも。


そうそう、聴きました、なんか隣町の方でも似たようなことが起きてるって。あっちは池じゃなくて、なんですかね、なんだったか、道がどうとか、そう聞きましたけど。うん、なんかやっぱりね。どうもキナ臭いというか。あ、そちらさんもそう思いますか。うん、やっぱり。


―広がってる。


あなたもそうお考えで。


それでこの件を調べられてるんですね。ええ、ええ。ウチも娘を盗られた身です。お手伝いできることがありましたら。


はいはい、あちらの工務店の? ああ、あそこですか。確かにウチでも噂は聞きましたね。なんでも一家全員かえってこなかったとか。


いや……でもそう、そうですね。いや、アテはあります。遠縁にはなりますけど、確かあそこと年賀状のやり取りしてるって言ってたのがいたかと。うん、ちょっと調べてみます。ええ、ええ。そちらもどうかお気をつけて。

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