エピローグ 東雲に染まって
東の空が茜に染まる頃。その喫茶店の灯が消える。
「こんな時期にクリームソーダはどうかと思ったけれど、お気に召してもらえてよかった」
店のカウンターで後片付けをしながら、青年はカウンターに座るもう1人の店員に声をかける。
「何言ってんだよ。白々しい。確信犯のくせして」
カウンターから返事がするけれど、そこに人影はない。いるのは天鵞絨の毛並みに金色の目をした美しい黒猫だけ。
「酷い言い方だな。それよりもう少し愛想よくしてよ。飲食店なんだからさ」
青年は当たり前のように話を続ける。その目線は確かにカウンターへ座る黒猫にむかっているのだけれど。
ニャア。
黒猫は面倒くさそうに一声なくと、金色の目を閉じて丸くなる。
片付けを終えた青年はその姿に苦笑しながら、店の灯を消したのだった。
◇◇◇
喫茶朔月堂。そこは新月の夜にだけ現れる不思議な喫茶店。
もし、夜空を見上げて月が見えなかったら、見慣れた路地に目を凝らしてみて欲しい。
青年と黒猫、そして煌めく鉱石スイーツがあなたを待っているはずだから。
喫茶朔月堂へ、ようこそ 蜜蜂 @beecia
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