死んでしまった保健室の先生の五つの心残りの鎖を外していく話





元となった長編の『三番シアターの亡霊はエンドロールの夢を見る』の読者です。

※当作品は長編の方を見ずとも楽しめる短編なので、こちらから入るのもよいと思います。


本作では「芦峯円」というキャラクターが主人公です。

長編の『三番シアターの亡霊はエンドロールの夢を見る』における芦峯円は大人ですが、彼の高校生時代の話が読めます。


私はこの芦峯円が大好きで、彼の魅力にだんだん狂ってきている節があるので、頼むから誰か私と一緒に芦峯円について語ってください(切実)。


長編の物語を楽しみつつ、芦峯円のキャラファンでもある私は、説明欄にURLが追加されているのを見て「え!!!スピンオフ!?男子高校生の芦峯円!?!?」と驚いて食いつきました。

長編世界でレンタル霊媒師をやっている彼は、当作品でも死んだ学校の養護教諭の成仏を手伝っています。

そう、彼はいわゆる幽霊が見える体質の人間なのです。


そんな彼の学校の養護教諭である芽衣子先生(メイちゃん先生)が死んだところからこの物語は始まります。

読み終わった後素晴らしい余韻に拍手すること間違いなし!!




 ~ここからネタバレあり~


メイちゃん先生が死んだ理由は結婚前提で付き合っていた彼氏にフラれたからという恋愛由来のもので、そのあっさりとした理由に芦峯円は呆れるのですが、私としては失恋で自暴自棄になるのめっちゃ分かるわ……(`;ω;´)と共感しました。

その勢いで死ぬまでいっちゃうメイちゃん先生、突っ走るキャラクター性が垣間見えて個人的には好きです。


では、この物語でそんなメイちゃん先生と芦峯円は何をしていくのか?ですが、死んだメイちゃん先生の両足首には黒い鎖が五本あります。

この鎖はメイちゃん先生の心残りをなくせば一つずつ消えていきます。

この五つの心残りの鎖を外すべく、芦峯円はメイちゃん先生と一緒に過ごします。

思いつく限りの心残りな事柄を消化していく二人。

順調に鎖はなくなっていき、最後に心残りが一つ残ります。




 ~ここから重大なネタバレあるのでまだの方は最後まで読んでからお願いします~




メイちゃん先生の最後の心残りが発覚した時ゾクッとしました。

「要所要所で俺のこと殺そうとしてた」←ヒィッ!

いくら親しみやすくてもメイちゃん先生は死人。怖い幽霊なのですね……。


しかも、メイちゃん先生に死に誘われて、抵抗しない円……。


「森岡家に疎まれるのも、芦峯家に空気のように扱われるのも嫌だった。」←この一文でめっちゃ悲しくなりました。

本編でも円の家庭については触れられていますが、短編でも描かれる養父との冷えた関係性。

本編は基本的には円視点ではないので(たまに入ってきますが)、円が複雑な家庭事情についてどのように感じているのかはっきりとしたことは分からなかった(大人の円は家庭のことを結構軽い感じで話してくれていた)のですが、やっぱりそんなに辛かったんだね(泣)そりゃそうだよね(泣)

誰か救ってあげてくれ……。


そして、そんな円の態度に改心するメイちゃん先生。

一人で行くのはきっと寂しいだろうに、死してなお、最期まで「先生」としての自分を保ったメイちゃん先生に涙です。「ちゃんと大人になりなよ」に続くセリフがとっても感動です。メイちゃん先生、大好きだよ。


長編の方のファンですが、こちらも読んで本当によかったです。

とっても素敵な、温かい物語でした。




※以下、芦峯円ファンの独り言だと思ってください※


↓このセリフ、やばいです!! 羨ましい! 私も言われたい!!↓
「大丈夫だよメイちゃん先生、これからは俺がいつでも見つけてあげるよ」

メイちゃん先生が芦峯円に煙草に火を付けてもらってるシーンもかなりドキドキしました。芦峯円をそういう目で見てしまってごめんなさい……。

保健室の先生の成仏を手伝う男子高校生の芦峯円を見ることができて、そういう意味でも大変満足なストーリーでした。