勇者であれば呉れてやる ―隔てられし世界より、招かれざるふたりめの来訪者―

　古き城の最深部、書物がびっしりと所蔵された書庫の片隅で、敵方から『魔族』と称される種族の男が深い思索に耽っていた。
　まさか召喚が成功するとは。それも忌々しい仇敵である『勇者』と来たもんだ。大いに利用したいところだが、実験動物？ 懐柔して手駒？ どれも得策ではない。味方にも秘密にしておき、真っ当に育て上げた『ふたりめの勇者』をありがたく敵方に呉(く)れてやれば、さぞかし迷惑なことになるだろう……。


【丁寧な紹介文】
　ひとりの社会人として平凡に暮らしていた男は、ある夜に突然、元いた世界とは似て非なる世界へと呼び出されてしまいます。彼はいわゆる『勇者』として迎えられるべき存在でしたが、あろうことか召喚された場所は『敵方』の根城。過去に例がない異常な事態にあって、厚遇が見込めないどころか、…続きを読む