AYAKASHI YOROZU. 夜帆衣

「ほな、確かに」


 分厚い札束を数え終えた夜帆衣はそう呟いてニンマリと微笑む。


「けど、相変わらず阿漕な商売しよるなあ。あのあんちゃんも気の毒に」


 向かいに座った大仏顔の言葉に夜帆衣は一転、皺深い唇を尖らせた。


「なに云うてますのん。わては香芝ちゃんの体と貴重な焔胡蝶を救ったんやで。あのままやったら傀儡くぐつにもなれんまま近いうちに人を殺して自分も自殺。そうなったら蝶も死んで元も子もないやんか」


 すると男は「まあ、それもそうやな」と苦笑いで返す。


「それに香芝ちゃんの体はあと何回かは使えるし、焔胡蝶も枢軸国あたりに高う売れるさかいなあ、ひひひ」


「ほんま、あんさん、阿漕やわあ、うひひ」


 妖萬あやかしよろずの店先、胡乱げな笑い声が響き渡る。


(了)

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妖萬 那智 風太郎 @edage1999

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