母親から厳しいピアノの指導を受ける少年。二人の閉じた世界の中で、少年は母親から期待という名の重荷を背負わされています。
その様子は見ていて心が苦しくなるほど。
少年にとって、ピアノは本来、楽しくて大好きなものだったはずなのに。
少年の世界の逃げ場のなさ、母親の厳しさが非常にリアルで、まるで自分のすぐそばで起きている出来事のようです。
そう。リアルなのは主人公の心情だけでなく、母親の行動や思いが凄く立体的な形を持っているのです。
だからこそ、苦しい。
しかしそこで現れた少年に、彼は。
少年の細やかな心の動き、もう一人の少年との出会いによって起きる変化。
それらを辿りながら読み、願わずにはいられませんでした。
どうか、どうか。
本作は、ピアノの音楽を絡めた読み応えのある心模様でした。
私は以前はクラシックばかりでしたが、今は歌謡曲ですね。
いや、フォークというかニューミュージックというか、簡単に言えば「ざ、さだまさしさん」一色で潤いがないですが、それはそれで、浮気はしないので。(笑)。
フレデリックは、心のお友達だったのでしょうか。
少女漫画を女性が描き始めた昭和の初期漫画史にそこはかとなく切なさが似ています。
誰も悪くないのです。
敢えて挙げろと言われてもその必要はないと思います。
各々の道を貫いた結果が、哀しさで満たされています。
落ち着いたときに、ご一読ください。
主人公はピアノを母親に指導されていた。その指導はスパルタという言葉すら凌駕するほどの苛烈なものだった。主人公は何度も、何度も、同じところを指摘され、コンクールではミスは許されないと言われ続けた。次第に追い詰められる主人公。
そんな主人公のもとに、少年が現れる。少年は主人公に音楽の楽しさを教えてくれた。そして主人公も、少年のピアノの音色によって、自分の心に素直になることを知る。
そして迎えたピアノコンクール当日。
主人公は果たして……。
主人公と不思議な少年の、音楽を通した交流が描かれる本作。
美しい文章によって紡がれる音楽の表現に、酔いしれてみてはいかが?
是非、御一読ください。