第6話
トンネルから出てきた二階堂の姿を見たタクシー運転手は、ほっとした表情を浮かべた。
「終わったんですか?」
後部座席のドアを開け、中へと入ってきた二階堂へ運転手が問いかける。
「ああ。最初からこのトンネルで事件なんてなかったのさ」
「良かった。これで観光客も戻ってきますよね」
「そうだな……」
二階堂がそう答えると、タクシーはトンネルの前でUターンをして来た道を戻ろうとする。
「そういえば、麓に温泉があるそうだな」
「ええ、美肌の湯って言われていて、若い女性とかがよく来ていますよ」
「そうか。じゃあ、そこへ向かってくれ」
二階堂はそう運転手に告げると、隣に座るヒナコのことを見た。
疲れてしまったのか、ヒナコは二階堂の肩に頭をもたれかけるようにして眠ってしまっている。
その顔は少女のようであり、とても優しい顔だった。
「ありがとう、ヒナコ」
二階堂は微笑みながら呟いたが、タクシーの運転手からは後部座席のシートにひとりで座る二階堂の姿しか見えていなかった。
眼鏡の探偵、二階堂 猫鳴トンネルの怪 了
眼鏡の探偵、二階堂 猫鳴トンネルの怪 大隅 スミヲ @smee
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます