1225 パーティー*フライングです

**すべて書き終えての完結は無理そうだったので、完結後みたいな話でお茶を濁します。後日、間のお話を書きます。すみません!**



 大広間の中央には、天井に届くぐらいの巨

大なモミの木が置かれていた。赤い実や金や銀の星を象った飾りが散りばめられ、所々に下げられた蝋燭に照らせれる。

 机の上には見たことのない料理ばかり並んでいた。まるごと出された魚も雉も見慣れないので、食べ物に見えないぐらいだ。

 くりすます、と柚葉は口の中で唱えてみた。何かの呪文みたいだ。


「雪でも降れば、ばっちりだけど、寒いからやめとこーか」


 幹を撫でた支配人がモミの木に語りかけるように言った。髭をそり、普段よりも調えられた髪は金色の組紐で結ばれている。濃灰色のフロックコートの前は開かれ、銀糸が縫い付けられたベストが見えた。

 体の線にそった服装を見た柚葉は仕事を優先するのだと思ったが全くの見当違いだと判断するには時間がかからない。

 千早の両手にはでんとつまれた料理の皿がある。


「お腹、壊しませんか」

「柚葉くんも気を付けてね」

「いやいやいやいや、支配人がですよ」

「奈津くんが張り切って作った料理だよ。全部食べないなんて考えられない!」


 そうだとしても、量が尋常ではない。

 客が来る前に会場の全てを食べきらないように祈った柚葉は思い出したように支配人を見た。

 口一杯に食べ物を詰めこんだ千早の顔は大広間で一番輝いている。支配人、と控えめに声をかけると、彼は口の中の物を飲み込んだ。

 柚葉は努めて軽い調子で話す。


「女将の話、受けなくもないです」


 喜色満面になった支配人に、でも、と釘を指す。


「納得するまで腕を磨いてからですけど」


 すまし顔で言ってのければ、支配人は髭のなくなった顎を撫でた。にんまりと笑った顔は明るい。


「そりゃあ、楽しみだ」

「はい、楽しみにしていてください」


 向き合った顔は堪えきれずにほぼ同時に息を吹きだした。

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まほろばホテルには神々が住まふ #アドベントカレンダー2024 かこ @kac0

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